そこに住んでいる人たちにとっては日常的に見かけたり使ったりする文字なのに、一般には珍しくて難読…そんな“方言のような漢字”が日本全国各地に多数存在する。特に地名や地形に見られることが多いという。ここでは中国四国地方での“方言漢字”を紹介。早稲田大学社会科学総合学術院教授の笹原宏之さんに、解説してもらった。
■鳥取県
読み方→ほき
崖の意味。崖(がけ)という言葉の定着が遅く、中世以降だったため、全国にさまざまな漢字と読みが存在する。鳥取は「伯耆国」(ほうきのくに)と呼ばれており、中国山地に位置する崖の多い国、という意味とされる。
■島根県
読み方→どう
出雲地方では大太鼓を「ドウ」と呼び、多くの町内会が所有している。毎年10月の第3日曜日には、松江神社の例大祭に合わせ、松江の開府を祝う祭として『松江祭鼕行列』が行われる。
■岡山県
読み方→さい
備前国の戦国武将であった税所元常は「さいしょもとつね」と読むが、税の字を読みやすくするため、右側のつくり部分を最にしたといわれる。
■広島県
読み方→かづき
江戸時代、広島藩は田んぼの収穫が思わしくない家があった時に、周りの家が共同負担し、補うことを「村〈かづき〉」といった。地名に残るが、ひらがなに変わった。
■山口県
読み方→めばる
石川県では「ごり」と読むが、山口県では「めばる」と読み、別の魚である。「鮴崎」(めばるざき)という土地には歓楽街があり、そこで船乗りたちが休息をとっていたため、この字が生まれた。同地ではめばるがとれる。
■徳島県
読み方→はり
新しい田を作る、開墾する、1年目の田という意味。昔は日本中で新しい田んぼが次々と生まれていたため、さまざまな呼び名がある。
■香川県
読み方→さこ
谷間や低い位置にある田んぼを指す。山の水が流れてくるので田を作りやすい場所だ。
■愛媛県
読み方→つづら
松山市には「〈つづら〉川」という川がある。縮れた植物の〈つづら〉の字である。
■高知県
読み方→ぬた
山梨県で使われる「垈」同様、低湿地を指す方言。この地名が現れる資料としては1588年の『久礼分地検帳』が古く、そこでは「ヌタノ川村」とカタカナ表記だった。そのヌタには〈さんずいに出〉という字が当てられたが、早い時期に「汢」に変わった。現在、四万十町の汢ノ川が地名として残る。
※女性セブン2019年2月14日号