「地域特有の単語やアクセントなど、お国言葉は広く認識されていますが、漢字にも土地に根付いたものがあるんです」
と話すのは、早稲田大学社会科学総合学術院教授の笹原宏之さんだ。そんな独自性のある文字を『方言漢字』というそうだ。そこで九州・沖縄地方に見られる“方言漢字”を笹原さんに解説してもらう。
■福岡県
読み方→はこ
福岡市東区箱崎にあるのが「筥崎宮」。「筥」の字は神様への敬意を表しており、宮は「筥崎」と書き、地名などは「箱崎」とする。
■佐賀県
読み方→おとな
戦国時代から使われており、「代官」を指す。江戸時代初期のころから佐賀では「咾」が役職名となっていた。県内には「咾分」(おとなぶん)というバス停や交差点、「咾搦」(おとながらみ)という地名が残っている。
■長崎県
読み方→しめ
壱岐市特産の古酒に『〈しめ〉尾』がある。日本独自の国字であり、室町時代後期の国語辞書である『文明本節用集』に記され、壱岐では名字や地名に使われている。
■大分県
読み方→のと
名字のほか、宇佐市には「西衲」という地名もある。
■宮崎県
読み方→はえ
林業で使われる国字で、山から運ばれた丸太が分別され、並べられた1つのまとまりを指す。この字が地名として残ったもの。延岡市には「三椪」(みはえ)地区があり、以前は三椪小学校もあった。
■鹿児島県
読み方→けさ
「福田衣」(ふくでんえ)とも呼ばれた袈裟の意味で、この字は田衣の部分を一文字にしたもの。昔は「畩太郎」と名前を付けるなど、薩摩では一般的な漢字だったが、現在は人名用漢字の制限があって、若者には見られなくなった。
※女性セブン2019年2月14日号