22歳の新星・貴景勝(関脇)との優勝争いの末、賜杯を手にしたのはモンゴル出身の関脇・玉鷲──その結果に「またモンゴル勢の天下か……」と考えるのは、ちょっと違う。
34歳にして初場所で初優勝を果たした玉鷲は、“異色のモンゴル力士”だ。
もともと母国でホテルマンになる勉強をしていたが、19歳の時、東大に留学していた姉を訪ねて来日し、幕下時代の現横綱・鶴竜と出会って相撲に興味を持ったという経歴の持ち主。モンゴル相撲の経験もない。
「モンゴル勢は部屋を超えた交流があるが、朝青龍が引退して白鵬(横綱)が中心になってから、一線を画す力士が出てきた。その代表格が玉鷲や、付け人への暴力が発覚して初場所前に引退した貴ノ岩でした。先輩たちにもガチンコでぶつかっていく」(若手親方)
一昨年10月に巡業中の鳥取で起きた横綱・日馬富士(当時)による貴ノ岩への暴力事件も、「白鵬らが生意気な後輩を糾弾する場だった」(同前)とされている。この“鳥取事件”の日は、玉鷲も声をかけられていたが、「楽しみにしている綾瀬はるか主演のドラマ『奥様は、取り扱い注意』が見たい」という理由で欠席し、難を逃れた経緯もある。
初場所では、玉鷲が白鵬との直接対決に勝利。「モンゴル人グループの崩壊」(ベテラン記者)と評された。
序ノ口デビューから1151日休場なしという現役最長記録の更新を続ける玉鷲。大関獲りとなる春場所では白鵬、鶴竜、逸ノ城ら上位のモンゴル勢とどんな相撲を取るのか。“モンゴルガチンコ時代”の到来だ。
※週刊ポスト2019年2月15・22日号