2018年11月29日夜、宮城県仙台市内の一軒家で、その家に住む小学2年生の長女Aちゃんと母親が死亡しているのを、帰宅した父親が発見した。遺書もなく、部屋を荒らされた形跡もないことから、警察は無理心中と判断した。
事態が急転したのは今年1月19日。父親が、Aちゃんの遺したメモを手に会見を開いたのだ。
《しにたいよ しにたいよ なにもいいことないよ わるいことしかないよ いじめられてなにもいいことないよ しにたいよ しにたいよ》
メモ用紙いっぱいに鉛筆書きの平仮名で「しにたい」の4文字が繰り返されていた。
「父親は、『娘は同級生からいじめを受けており、母親もいじめへの対応で体調を崩して友人づきあいが減った』と明かし、そのうえで『学校に繰り返し相談したが、表面的な対応が続いた』として無理心中の責任は学校にあると訴えました。メモは昨年の7月にAちゃんが書いたものだそうです」(全国紙社会部記者)
◆世の中には意地悪な人もいるが、助けたがりな人だっている
「嫌だったら学校に行かなくてもいい」「やりかえしたっていい」子供に向けて書かれたいじめの本にはそんな文言が並ぶ。しかし、これが地域に根を張り、子供を守り育てながら生きている母親であれば、実践できる人はどのくらいいるだろうか。
「本当に危険を感じたら、とにかく子供と一緒に逃げろ」と強調するのは、母親同士の葛藤を描いた漫画『ママ友がこわい』(KADOKAWA)の作者でイラストレーターの野原広子さんだ。
「親としては、“うちの子に限ってこのままのワケがない”と立ち直りを期待したり、ママ友や学校とのトラブルを避けて手をこまねきがちです。
でも本当に命を落としてしまう前に、必要なのは、目の前にある危機から子供と一緒に逃げること。学校や不動産に縛られる人も多いですが、最悪の場合は不登校で構わないし、家は売るか貸せばいい。世の中には意地悪な人もいますが、助けたがりな人だって、多くいるんです」
危機を回避するために、普段から「分散」を心がけることも大切だ。精神科医の片田珠美さんは言う。
「最も困るのは、ピンチの時に逃げ場がなくなることです。だから普段から子供は習い事をしたり、スポーツクラブに通ったりして学校とは違う居場所をつくり、母親も専業主婦よりは地域活動やパートなどをして、外の世界との接点を増やすことが大事です。ライフスタイルは“集中”ではなく“分散”が、現代を生き抜くキーワードです」
《早急に対応しないといけない》
《心の傷を分かってほしい》《守りたい。》
Aちゃんの母は最後までSOSを発し続けた。もし誰かがその声をすくい上げて適切な対応をしていたら、あるいは「逃げなさい」と無理矢理にでもその手をとってひっぱっていたら、Aちゃんは今この瞬間も、教室で元気に手を挙げていたのではないだろうか。
※女性セブン2019年2月21日号