桃の節句に女の子を祝って飾るひな人形。何才まで飾るのか、2人目にも買うべきかなど、意外と知らないことも多いのでは? 老舗人形店『吉徳』の浅草橋本店店長で、歴史的背景や手法技術など、ひな人形のことを熟知する「節句人形アドバイザー」の松本裕司さんに、知っておきたいひな人形の基本を教えてもらった。
◆雛人形は身代わり。お顔や衣装はお好みで
華やかなひな人形は、ただ飾って楽しむだけでなく、女の子の身代わりとなって災厄を祓う「人形」として見守ってくれる存在でもある。
「ひな人形は、昔ながらの人形遊びと、身代わりの人形(ひとがた)の風習が合わさって生まれました。女の子の誕生を祝い、健やかな成長を願うとともに、立派な人との良縁に恵まれるようにとの願いも込められています」(松本さん・以下同)
伝統的な七段飾りだけでなく、近年は三段飾りや親王飾り(男雛と女雛のみ)なども人気。
「選ぶ際は、予算とともに飾る場所をイメージするとよいでしょう。いろいろな絵柄の衣裳やお顔がありますが、それらはお好みで選んでください。大きく京風と関東風に分かれ、昔ながらの京風は、お顔や衣裳も雅なものが多いです。一方、関東風は現代に近い端正なお顔で、衣裳も桜や吉祥文様などさまざま。年々種類が豊富になっているひな人形を紹介しますので、飾り方やしまい方も参考にして、楽しんで飾ってください」
◆温度差と湿気は大敵!1人1つのひな人形を用意
【飾り方の基本】
●立春後には飾ってOK。しまう際は晴れた日を選んで
飾る日に明確な決まりはないが、節分後の立春以降が一般的。ひな祭りが終わったら早めに片づけること。ただし、雨の日は湿気も一緒にしまってしまうため、晴れた日を選ぶこと。
●直射日光と暖房近くは避けて飾る
温度差が大きいと人形が傷むため、直射日光や暖房の熱風が当たる場所に飾るのは禁物。とはいえ、お祝いで皆が集まる居間に飾りたい場合は、熱風が当たらない暖房の真下などへ。
●1人につき1つが正解。娘に引き継ぐのはNG
ひな人形を自分の子供や孫に引き継ぐのは誤り。母親や祖母のひな人形がきれいに残っていても、それは役目を終えたもの。子供には、その子の身代わりとなる新たなひな人形を用意して。
●ひな人形は一生のお守り。大人になっても飾れる
何才まで飾るかは特に決まりがないため、各家庭に委ねられる。結婚後も、自分の子供のひな人形と並べても問題ない。子供に限らず、女性を一生守ってくれるお守りだからだ。
◆2人目の娘にも新たなひな人形の用意を
2人目以降の娘が生まれた場合も新たなひな人形を用意する。2組も飾るのが難しい場合は、市松人形など、違うタイプの人形を用意するとよい。長女のひな人形と併せて飾れば、より華やかな空間になる。
※女性セブン2019年2月21日号