ライフ

なぜ猫の方が犬より圧倒的に殺処分が多いのか、対策も広がる

全国的な広がりをみせているミルクボランティア(写真提供/NPO法人「犬と猫のためのライフボート」)

 環境省のデータによると、2017年度に殺処分された猫の約6割は離乳前の子猫だった。今、そんな子猫を1匹でも減らそうと「ミルクボランティア」が全国的な広がりをみせている。どんな取り組みなのか? その活動内容を紹介する。

 2017年度に保健所などに収容された犬の数は3万8511匹、猫は6万2137匹だった(環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」より)。そのうち返還や譲渡されることなく、殺処分となった犬の割合は21%、一方猫は56%にものぼった。

 猫の方が殺処分される割合が高い背景には、収容される猫のほとんどが離乳前の子猫なのが関係している。NPO法人「犬と猫のためのライフボート」理事長・稲葉友治さんによると、離乳前の子猫は授乳や排泄の補助などで、世話に手間がかかるという。

「特に生まれたての子猫は2~4時間おきにミルクを飲ませてあげる必要があります。手がかかるため、助けたくても助けられないといった事情がありました」(稲葉さん・以下同)

 そんな中、子猫の命を救う活動として注目されているのが、離乳前の子猫を一時的に自宅で預かり、世話をする「ミルクボランティア」だ。ここ数年、行政も殺処分を減らすために本腰を入れて認知に努めるようになり、全国的な広がりをみせている。

◆命が助かるだけでなく“人好き”な子に育つ

 ミルクボランティアに求められる内容は、主に以下の3つだという。

【1】2~4時間おきに授乳
【2】排泄の補助
【3】体重、ミルクの量、健康状態など毎日の成長を記録する

「親代わりとなり、ミルクを与え、タオルやティッシュペーパーなどで陰部を刺激して排泄のお手伝いをします」

 預かり期間は、平均2週間ほど。場合によっては、1か月以上預かることもある。

 世話に必要な哺乳瓶やミルクなどは、無償で提供または貸し出してくれる。ただし、これは募集している自治体や団体によって異なり、全額自己負担の場合もある。また、報酬手当等の支給はない。

 さらに応募条件も募集団体によって異なる。例えば、稲葉さんの団体では、「1日4時間以上留守にしないかた」「ペット可の住宅に住んでいる」「家族全員が受け入れを同意している」「成人、もしくは保護者の同意・同行が可能」など最低限の条件を設けている。

「先住猫がいても、接触しないよう隔離できたり、ワクチン接種や不妊・去勢手術済みであればOK。行政の場合は、管轄内に住んでいるなど、移住地域を限定しているケースがほとんどです」

 ミルクボランティアに登録後、保健所などに子猫の収容があると連絡があり、自宅での世話が始まる。

「ミルクボランティアのお陰で、1匹1匹に目が行き届き、適正な飼育ができます。そして小さい頃から人間と触れ合うことで、人好きな子に育ち、後々人間と一緒の生活にもなじみやすくなります」

 毎年春から夏にかけ、行政機関には、毎週数十匹もの子猫が収容されるという。小さな命を、たった数週間で消してしまわないためにも、できることから始めてみてはいかがだろう。

※女性セブン2019年2月21日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン