脱税の疑いで逮捕された「青汁王子」こと、三崎優太容疑者(29)。数多くの経済事件を取材してきたジャーナリスト・伊藤博敏氏は、逮捕直前まで本人とのやりとりを続けていた。“時代の寵児”は何を語っていたのか──。
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「1年にも及ぶ査察で、日本が本当にイヤになりました。処分が決まったら、国税を批判する本を書いて売りまくり、日本を脱出するつもりです」
こう“決意”を語っていたのは、2月12日、法人税と消費税1億8000万円を脱税したとして、東京地検特捜部に逮捕された健康食品会社メディアハーツ(東京・渋谷)代表で“青汁王子”として知られる三崎優太容疑者である。
取材を行なったのは都心の超高級レジデンス。昨年11月22日、三崎容疑者はモロッコ旅行から帰ったばかりで、女性秘書に促されて部屋に入ると、専属の美容師に髪を整えてもらっているところだった。
以降、約3か月の間に、メールや電話を交わし、最後の電話は、地中海中心部のマルタ共和国から帰国、東京国税局の取り調べを受けた直後だった。
「私は、どうなるんでしょうか。告発されますかね。なにか情報は入ってないですか」
その前から、彼はマルタ移住をほのめかしていた。海外移住を選べば、国税を刺激、告発される可能性は高まる。
しかし三崎容疑者は、「国税(担当者)には移住を伝えているし、逃げ隠れするつもりはありません」と、そこは意に介さず、なにより「脱税した覚えはない。自分は悪くない」と、一貫して主張していた。
メディアに露出を繰り返し、年収は12億円で、1億円超で競走馬を落札、フェラーリなど高級外車を乗り回す。そんな「青汁王子」の派手な私生活には、それほど興味はなかった。
私が三崎容疑者に興味を持ったのは、通販事業への本格参入から3年で売上高122億円(2017年9月期)を達成した“秘密”を知りたかったからだ。
三崎容疑者に会い、本社を訪ねて、今回、共犯で逮捕された内藤由美子容疑者(49)に話を聞いてわかったのは、「ネット広告」の効用を最大限に生かしたこと。現役高校生の18歳の時に会社を立ち上げ、成果報酬型のアフィリエイト広告で、月商数百万円の会社にした三崎容疑者は、「ウェブを駆使して販売する天才」(内藤容疑者)だという。「美と健康に役立つすっきりフルーツ青汁」は、若い女性を中心とするネットユーザーに受けた。青汁は累計1億3000万本以上売れ、大きな財を成した三崎容疑者は、その容姿も相まっていつしか「青汁王子」と呼ばれるようになった。
逮捕容疑は、やはり共犯逮捕の加藤豪容疑者(34)の会社に「架空の広告宣伝費を計上するなどの手口」ということだったが、三崎容疑者は「“後ろめたい広告宣伝”はあっても架空ではない」と、否定していた。
「(国税は)架空発注して、浮かせた分を私に還流させていたというんですが、そんな工作はしていません。2017年に12億円以上の法人税を払っています。1億4000万円(消費税を除いた法人税)を払わず、犯罪者になるつもりはない」
“後ろめたい”というのはその広告戦略だ。