錦戸亮主演で好調をキープしている月9ドラマ『トレース~科捜研の男~』(フジテレビ系)。沢口靖子主演の長寿ドラマ『科捜研の女』(テレビ朝日系)を意識したサブタイトルでも話題を集めているが、両ドラマの違いをコラムニストのペリー荻野さんが解説する。
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毎回、難事件と格闘する『トレース~科捜研の男~』の真野礼二(錦戸亮)。タイトルを聞いたときは、誰もが「科捜研の男って」と思ったはずだが、意外にサラッと受け入れられていたのにもちょっと驚いた。考えてみれば、日本テレビでは『家政婦のミタ』もあったし、テレビ朝日にも『家政夫のミタゾノ』もあったわけで、いちいちタイトルで驚く時代じゃないんでした。
それにしても、である。同じ「科捜研」を舞台にした作品でも、「男」と「女」ではドラマの作り方がまったく違う。一番の違いは、キャラクター重視か、科学重視かというところだ。
『科捜研の男』は、圧倒的に登場人物寄りに話が進む。主な顔ぶれは、協調性がなく、単独行動が多い真野と科捜研の新人沢口ノンナ(新木優子)、たたき上げ刑事・虎丸良平(船越英一郎)である。真野には、自身にも家族を巻き込んだ悲惨な事件の経験があり、その真相解明がドラマの大きな軸だ。ノンナは「自分は科捜研に向いてないかも…」とすぐに涙目。虎丸は、常に「不機嫌・大声・黒ずくめ」の3点セットで大股で歩いている。
一方、『科捜研の女』の主人公は、京都府警科学捜査研究所の法医研究員・榊マリコ(沢口靖子)。1999年のスタートで、現在、日本最長寿ドラマシリーズの座を守り続けているだけに、今さらキャラクターの説明の必要もない。マリコは番組スタート当初は、かなりの変人キャラだったが、すっかり落ち着き、科学一筋20年!親友がからんだ事件やラブロマンスっぽい話もあったけど、もはやマリコ本人の過去や未来に何があっても驚きません!という域に達している。
『科捜研の女』には、「名言」と「謎の妄想」があるのも大きな特長だ。たとえば、シーズン16の第四話「似顔絵の女」でマリコは「科学は人を救うと信じている」「私たちは私たちのできることを」などときっぱり。そんなマリコは妄想の中で、金髪お姫様になったり、新選組の隊士になったりすることもある。お茶目シーンもお約束だ。
「成傷器照合」「ALSによる遺留品鑑定」「足跡鑑定」「口唇紋鑑定」など鑑定法を毎回繰り返しテロップで出して、物忘れの激しい世代にもアピールするサービス精神も忘れない。さすが、視聴者の心をつかむコツをよく知っている。
だが、「男」には「女」にない要素がまだある。それはアップの数。スターのアップを多用するのは、月9枠の伝統ともいわれるが、試しにカウントしてみると、『科捜研の男』第6話では中盤の10分間だけで、新木優子のアップが実に20回!(このアップは単独で大きめに顔が映し出されるというペリー判定)、同様に前述した『科捜研の女』シーズン16第4話中盤10分間のマリコのアップは4回だった。各話の内容にもよるが、マリコはチームで動くことが多く、単独のアップは基本的に少ない。血痕採取の綿棒のほうがじっくり映し出されてるくらいである。
『科捜研の女』は来シーズン、近年の日本のドラマには珍しく1年間放送されるという。20年目にしてこのパワー。紫色のゴム手に同じ色のマスクでコーディネイトもばっちりの『科捜研の男』も、まだまだ頑張ってほしいものだ。