「親の認知症」が、多くの人にとって身近な問題になりつつある。しかし、いざという時のための対策や準備は、あまり知られていない。認知症が進行して金融機関の窓口で「判断能力がない」と判定されると、口座を事実上凍結され、家族も、本人さえも引き出せなくなるケースがある。その対策として挙げられるのが、「成年後見(任意後見)」と「家族信託」だ。
そのうち「家族信託」は親が元気なうちに家族に資産の一部を信託し、運用・管理を委ねる制度。信託した財産は、受託者である家族に管理を委ねられるため、信託契約の内容次第で家族は広い財産処分権を持つ。
家族信託で子供が親から実家の不動産の信託を受けた場合、法務局で所有権移転登記及び信託登記を行ない、「所有権」を子供の名義に変更する。その際、新たに登記簿に作成される「信託目録」に委託者、受託者、受益者と〈受託者は信託不動産を第三者に賃貸することができる〉などの信託内容が記載されて公示される。
この登記手続きは司法書士に依頼できるが、移転及び信託登記にかかる不動産登録免許税は相続と同じ(固定資産税評価額の1000分の4)だ。贈与税の課税対象にも、不動産取得税の課税対象にもならない。
一方、親の預金の信託を受ける場合、子供は親の財産を管理するため、特別の「信託口口座」を開設してそこに預金を移す手続きを取る。通帳には「委託者(親)」と「受託者(子)」の名前が記載される。
問題は信託口口座を開設できる銀行が一部の信託銀行など極めて少ないことだ。家族信託コンサルタントの横手彰太氏が語る。