冬の連続ドラマは、折り返し地点を過ぎたところだが、人気作品にはある傾向が見られるという。それは“お説教ドラマ”というジャンル。いずれも高い支持を集めるものばかりだ。それらはなぜウケるのか? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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今冬は刑事、弁護士、塾講師、不動産営業、派遣社員、後妻業……さまざまな“職業”の女性を描いた連ドラが放送されています。
なかでも超個性派ヒロインのキャラクターが話題を集め、視聴率も全話2桁をキープしているのが、『家売るオンナの逆襲』(日本テレビ系)と『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日系)の2作。それぞれ大石静さん(67歳)、遊川和彦さん(63歳)という大御所の脚本家が手がける作品です。
両作に共通しているのは、「ヒロインがお説教のようにまくしたてるシーンが見せ場となっている」こと。つまり、お説教のようなシーンとセリフが視聴者にウケているのです。
◆現代人ならではの悩み解決方法を指南
いくつか下記に例を挙げてみましょう。
『家売るオンナの逆襲』の2話で三軒家万智(北川景子)は、神子巴(泉ピン子)に「あなたは『孤独死が怖いから』とここ(ネットカフェ)で暮らしています。しかし、人の死に孤独でない死はありません。一人で死のうと大勢の家族に囲まれて死のうと、人は一人で死ぬのです。いい年をこいてそんなことも分からない人間は『甘ったれ』というほかありません!」「今日踏ん張ることのできない甘ったれ人間に、明日の朝日は見えなくて当然!『明日から頑張ろう』なんて言い訳をこいている人間にはどんな未来も訪れないのです」
4話で三軒家万智は、山路功夫(佐野史郎)に「山路様ご夫妻はもっとご自分のことをお考えになったらいかがでしょうか。あなたは高度経済成長時代に社会人デビューなさり、『勤労こそ美徳』という価値観が骨の髄まで染み込んでおられます。奥様も『自分を殺して働く夫につき従うことが妻の美徳』だと信じて生きてこられました。山路様は365日朝から深夜まで働き、家には寝に帰るだけ。子どもが生まれた日も、初めて笑った日も、初めて立った日も目の当たりにすることなく、仕事、仕事、仕事に明け暮れてきました。しかし、山路様世代が身を粉にして働いたことで日本の繁栄が築かれたのです。あなたは十分世の中のために、会社のために、家族のために働きました。その結晶である尊いお金を『時短を美徳』とし、楽して得することを夢見、『親のスネをかじれるだけかじってやろう』とする若者のために使うことはありません!」
『ハケン占い師アタル』の2話で目黒円(間宮祥太朗)の「俺にも何かいいところがあるのかな?」という問いに的場中(杉咲花)は、「スネてんじゃねえよ!今まで通り自分らしさを失わずにいたら、必ず誰か手を差し伸べてくれるって」
3話で品川一真(志尊淳)の「ほかのやつはちゃんとわかってるわけ? 今やってる仕事が正解だって」という問いに的場中は、「あんたみたいな若造に働く意味や喜びが簡単にわかってたまるかっつーの。そういうのはいろんなこと経験して初めてわかるからありがたみがあるんだろ? それなのにつらいことがあるたびに人のせいにしたり、チョイチョイって検索して答え見つけようとしてんじゃねえよ!」
いずれもヒロインが登場人物の悩みを解決するために言葉をかけているのですが、こうして文字にすると、お説教のように見えてしまいます。さらに見方を変えると、大御所脚本家の2人が、「現代人の悩みはこうやって解決すればいいんだよ」と指南しているようにも見えるのです。
ただ、なぜお説教が見せ場の作品が人気を集めているのでしょうか?
◆若年層にウケるお説教ドラマ『3年A組』