大坂なおみのPR動画をはじめ、「黒人」や「有色人種」に関して考現学の観点から様々な事例をとりあげてみると、錯綜とした現実が見えてくる。評論家の呉智英氏が考えた。
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テニス選手大坂なおみのキャラを使ったネットのPR動画が批判されている。大坂はハイチ系米人の父と日本人の母との混血である。ことわっておくが、日本語の「混血」を差別表現として排斥し、英語の「ハーフ」を強制する厚顔なアジア蔑視の風潮に、私は断じて与しない。でも、人権思想ってもともとそういう偽善的差別思想だよ、というのなら話は別だが。
本題に戻って、この動画だ。大坂の顔がほとんど白人のように白い。“忖度”が働いたらしい。彼女が黒人系だと思われたら失礼になるからと。動画の製作者は恥ずべき連中だ。批判も当然である。
同じような例を二〇一七年十一月十四日付朝日新聞が報じている。
ハリウッド女優ルピタ・ニョンゴは、英国の雑誌の表紙写真で縮れ毛を修正され、抗議して謝罪させた。ニョンゴは両親がケニア人。肌は黒く髪は縮れている。それを「欧州中心の概念に当てはまるように修正」されたことに抗議したのだ。彼女の抗議も当然である。
この記事にはオチもついている。この写真を撮ったカメラマンは、在米のベトナム人だというのだ。同じ有色人種としての“忖度”があったのだろうか。