食べ物の産地を気にする人は多いが、薬が国産かどうかを気にする人は少ないのではないだろうか。日本は医薬品が輸入超過で、2007年は輸入額が1兆784億円だったのが、2017年は1兆9554億円と約2倍に膨れ上がった。
多くの海外産医薬品が日本に出回る中、医療業界で危険視されているのが「中国製薬品」だ。現地では病気を治すどころか、さらに病気を増やしてしまうような危険な薬が相次いで見つかっている。
中国発の医薬品や原薬はどれだけ日本に流入しているのか。厚労省医薬品審査管理課の担当者が語る。
「日本の製薬企業は、膨大な数の中国産医薬品や原料を、厚労省に医薬承認申請していて、その総量や総品数は厚労省では把握していない。実際に流通する医薬品で多いのは、中国の製造工場で箱詰め前まで製造して、日本の工場でパッケージするケースです」
そうした薬は、「外見は日本製、中身は中国製」のため見分けることが難しい。海外の医薬品事情に詳しいジャーナリストの郡司和夫さんが懸念するのは、「原料の汚染」だ。
「たとえば、血液の凝固を阻害する原薬『へパリン』は豚の腸から抽出しますが、中国は飼育環境が悪く、豚コレラなど感染症を引き起こした豚や、感染症を防ぐため抗生物質を投与された豚が多くいます。それらの豚から製造された薬は、当然ながら汚染が懸念されます」
中国では2012年に、大手製薬会社「健康元薬業集団」が下水道の油で抗生物質の原料を製造していたことが発覚した。そのメーカーが製造した原薬は、日本を含む二十数か国に輸出されたとも報じられた。
特に中国産の原薬が多いのが「ジェネリック医薬品」だ。ジェネリックとは、大手製薬メーカーなどが製造販売する「先発薬」の特許が切れた後に発売される「後発薬」のこと。価格の安さが最大のメリットだが、リスクもある。一般社団法人「国際感食協会」理事長で薬剤師の宇多川久美子さんが指摘する。
「ジェネリック医薬品は先発薬と主成分が同じだけで、それ以外の添加物や薬の形状、品質管理などはメーカーによってばらつきが大きい。国内でも資本の少ないメーカーだと、ある程度作りがずさんでも目をつぶって、中国から安く輸入して日本でパッケージだけして販売しているところもある。そうすると同じ成分の薬でも、成分の溶け出すスピードが速くて効きすぎたり、副作用が出るなどのリスクがあるものもあります」