仏自動車大手・ルノーの新会長ジャン・ドミニク・スナール氏(65)が、日産自動車の経営陣と会談するために14日に来日した。日産の前会長であるカルロス・ゴーン被告が会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された事件の“事後処理”が少しずつ動き出した。
経済ジャーナリストの片山修氏が語る。
「スナール氏が、『経営統合』などを巡る両社の対立をどう収束させるかが注目されています。同氏は対話を重視する紳士的な人柄。(ルノーの大株主である)フランス政府は、丁寧な対話で日産との関係を修復してほしいという考えがあるのでしょう」
ところが、日仏のメディアが全く報じない、スナール氏と日本との思わぬ“因縁”があった。フランス事情に詳しいジャーナリスト・宮下洋一氏が話す。
「1974年に日本赤軍がオランダ・ハーグのフランス大使館を占拠した『ハーグ事件』(*)の時、4日間にわたり監禁され、人質として“交渉カード”にされたフランス大使がスナール氏の父親であるジャック・スナール氏です。ハーグ事件の際、ジャック氏は『お前たちは何が欲しいんだ?』と日本のテロリストと対峙した外交官だと現地では伝えられています」
【*/1974年9月14日にオランダのデン・ハーグで起きた日本赤軍によるフランス大使館立て籠もり・人質事件。交渉の結果、オランダ政府が約3000万円を払い、フランス政府は要求を呑んで国外逃亡用のボーイング707を用意。犯行グループはそれに乗ってシリアに逃亡した】
ただでさえ、「フランスでは連日、ゴーン被告の問題が大々的に報じられ、国民の間では異常な長期勾留への批判感情が広がっている」(元産経新聞パリ支局長で在仏ジャーナリストの山口昌子氏)というなか、“父が日本のテロリストに酷い目に遭わされた”という人物が、日産の命運を握るルノーの新会長に就任したことに、何か意図があるのか。
※週刊ポスト2019年3月1日号