2018年12月、ファーウェイ(華為技術)の創業者任正非CEO(最高経営責任者)の娘で副会長兼CFO(最高財務責任者)の孟晩舟氏が、対イラン制裁に違反した商取引に関する詐欺容疑で、アメリカからの要請を受けたカナダ政府によって逮捕された。そして、ファーウェイ製品の排除を関係各国に呼びかけたのだ。中国政府の諜報活動にファーウェイが協力していた疑いが濃くなるなか、経営コンサルタントの大前研一氏が、この困難をファーウェイが乗り越える方法について考えた。
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ファーウェイの2017年度の売上高は実に約9兆9000億円で「BAT」と呼ばれる中国IT大手3社のバイドゥ(百度)、アリババ集団、テンセント(騰訊控股)の合計売上高をも上回っている。しかし非上場のため、その経営実態は不透明な部分が非常に多い。外国企業は中国市場への参入が難しい一方、ファーウェイやZTE(中興通訊)などは中国国内ではやりたい放題だ。それは結局、両社が政府(=中国共産党)に恭順しているからにほかならない。
今回のファーウェイ製品排除の拡大を受けて、「マスコミ嫌い」で知られる任CEOが世界のマスコミを相手に記者会見し、諜報活動疑惑を否定した。
だが、中国では2017年に「いかなる組織および個人も、国家の情報活動に協力する義務を有する」と定めた「国家情報法」が施行され、中国企業・中国人は、好むと好まざるとにかかわらず、政府の情報活動に協力せざるを得ないのだ。顔認証に関しても、その情報は政府と共有しなければならない。となれば、アメリカとその関係国が自己防衛のためにファーウェイ製品を排除するのはやむなし、ということになる。