ライフ

【嵐山光三郎氏書評】中国で1500年以上著され続けた怪異譚集

『中国奇想小説集 古今異界万華鏡』

【書評】『中国奇想小説集 古今異界万華鏡』/井波律子・編訳/平凡社/2400円+税
【評者】嵐山光三郎(作家)

 中国で千五百年以上にわたって著されつづけた、超現実的な怪異譚集。妖怪、鬼、亡霊、死者がマスコット人形みたいにゴロゴロ出てくるから、ドキドキ。よくもまあシュールな話を思いつくなあ、こんなのアリ? と仰天して、そのシーンを読み返してしまう。

 陶淵明(とうえんめい)といえば「帰去来辞」で故郷の田園に帰った文人として知られるが、陶潜の名で「地獄の沙汰も『腕輪』次第」という怪談を書いた。夫の遺体がむっくり起きあがって、妻の金の腕輪をつけてくれ、と頼む。冥土の役人に袖の下を渡すためである。「常春の異界」は、死者の極楽旅行記で、「浦島太郎」の龍宮城に通じる。こんな異界ならば、死ぬのが愉しみになる。

 読みながら膝を打ったのは、「籠のなかの小宇宙」で作者は呉均(四六九~五二〇)。書生が口から若い女を吐き出し、若い女が聡明そうな若い愛人を吐き出す。中国古代の妖怪譚、仙人譚はファンタジックな迷宮をぐるぐる廻る。書生の肉体が、この世の裏切りでできているという不思議。

 唐代の傑作は「枕中記」(フシギな枕の話。「邯鄲(かんたん)の夢」で知られる)と「美女になった狐」(狐の化身の美女と人間の男の恋)、恋する少女の分身の術「離魂記」など、奇想天外な物語展開である。

関連記事

トピックス

寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
【ステーキの焼き方に一家言】産後の小室眞子さんを支えるパパ・小室圭さんの“自慢の手料理”とは 「20年以上お弁当手作り」母・佳代さんの“食育”の影響
NEWSポストセブン
アントニオ猪木さん
アントニオ猪木を看取った付き人が明かす「最期の2か月」 “原辰徳の物まねタレント”が猪木を介護することになった不思議な巡り合わせ
週刊ポスト
不正駐輪を取り締まるビジネスが(CPGのHPより)
《不正駐輪車を勝手にロック》罰金請求をするビジネスに弁護士は「法的根拠が不明確」と指摘…運営会社は「適正な基準を元に決定」と主張
NEWSポストセブン
「子供のころの夢はスーパーマンだった」前田投手(時事通信フォト)
《ワンオペ育児と旦那の世話に限界を…》米国残留の前田健太投手、別居中の元女子アナ妻が明かした“日本での新生活”
NEWSポストセブン
眞子さんと佳子さま(時事通信フォト)
《眞子さん出産発表の裏に“里帰りせず”の深い溝》秋篠宮夫妻と眞子さんをつないだ“佳子さんの姉妹愛”
NEWSポストセブン
宮内庁は小室眞子さんの出産を発表した(時事通信フォト)
【宮内庁が発表】眞子さん出産で注目が集まる悠仁さま成年式「9月ならば小室圭さんとともに出席できる可能性が大いにある」と宮内庁関係者
NEWSポストセブン
田中容疑者の“薬物性接待”に参加したと証言する元キャバクラ嬢でOLの女性Aさん
《27歳OLが告白》「ラリってるジジイの相手」「女性を切らすと大変なんだ…」レーサム創業者“薬漬け性接待”の参加者が明かした「高額報酬」と「異臭漂うホテル内」
週刊ポスト
「大宮おじ」「先生」こと飯田光仁容疑者(32)の素顔とは──(本人SNS)
〈今日は〇〇にゃんとキスしようかな〉32歳無職が逮捕 “大宮界隈”で少女への性的暴行疑い「大宮おじ」こと飯田光仁容疑者の“危険すぎる素顔”
NEWSポストセブン
明るいご学友に囲まれているという悠仁さま(時事通信フォト)
悠仁さまのご学友が心配する授業中の“下ネタ披露” 「俺、ヒサと一緒に授業受けてる時、普通に言っちゃってさぁ」と盛り上がり
週刊ポスト
ラウンドワンスタジアム千日前店で迷惑行為が発覚した(公式SNS、グラスの写真はイメージです/Xより)
「オェーッ!ペッペ!」30歳女性ライバーがグラスに放尿、嘔吐…ラウンドワンが「極めて悪質な迷惑行為」を報告も 女性ライバーは「汚いけど洗うからさ」逆ギレ狼藉
NEWSポストセブン
TBS系連続ドラマ『キャスター』で共演していた2人(右・番組HPより)
《永野芽郁の二股疑惑報道》“嘘つかないで…”キム・ムジュンの意味深投稿に添付されていた一枚のワケあり写真「彼女の大好きなアニメキャラ」とファン指摘
NEWSポストセブン
田中圭の“悪癖”に6年前から警告を発していた北川景子(時事通信フォト)
《永野芽郁との不倫報道で大打撃》北川景子が発していた田中圭への“警告メッセージ”、田中は「ガチのダメ出しじゃん」
週刊ポスト