【著者に訊け】佐藤俊氏/『箱根0区を駆ける者たち』/1300円+税/幻冬舎
刊行日は昨年12月20日。つまり第95回箱根駅伝で東海大が青学大の5連覇を阻み、悲願の初優勝を飾る前から、『箱根0区を駆ける者たち』の著者・佐藤俊氏は結末を予期していた?
「下馬評では昨秋の出雲駅伝と全日本を制した青学優勢とみる声が圧倒的でしたけど、現3年生に〈黄金世代〉を擁する東海にも十分勝機はありました。両角速(もろずみ・はやし)監督が今年の大会後、『前回の反省とチャレンジ』と語られたように、選手起用とピーキングさえうまくいけば、王者青学にも死角はあるはずだと」
本書では前回総合5位に沈んだ当時のチームに密着。晴れて走者となった者とサポートに回った者のドラマを各区間に並走させて記し、平均視聴率30%を超すこの国民的行事の舞台裏に迫る。例えば当時主務を務めた西川雄一朗は言う。〈自分らは、箱根0区なんです〉
そう。駅伝とは走者以外にも給水、付き添い、計測など、数々の裏方を要し、それを多くの場合は走者に選ばれなかった部員が担う残酷な競技でもあった。
東海大では昨年の4年生のうち、〈区間エントリー、3名。0区エントリー、13名〉。特に一度も箱根を走ることなく裏方に回った者の思いは、察するに余りある。スポーツライターとして活躍する著者には原晋監督及び青学陸上部の密着ルポ『駅伝王者青学 光と影』(2017年)もあり、自身も青学出身。それが東海に鞍替え(?)するとなると、嫌みの一つも言われたのでは?