3464万円。これは東京都杉並区が「がん検診精度管理強化費」として計上した来年度予算だ。それもそのはず、杉並区のがん検診は“ザル”だった。肺がん検診で「見落とし」ミスが相次ぎ、昨年、40代女性が亡くなった。
同様の見落としは全国で起きている。2017年11月には兵庫県の県立柏原病院においてわきの下にできたがん腫瘍が、2016年3月には福岡県の北九州市立医療センターにおいて肺がんがそれぞれ見落とされていたことが明らかになった。きちんと検診を受けて「異常なし」のお墨付きをもらっても、「絶対に大丈夫」とは言い切れない。
がん患者の数は増加傾向にあり、年間37万人が命を落とす。だからこそ、漫然と検診を受けるだけでなく、できるだけ自分で不調に気がつき、早期に見つける必要がある。医療ジャーナリストの村上和巳さんが言う。
「そのためには、体が発する“小さなサイン”を敏感に感じ取り、自分自身で防衛しなければなりません。些細な症状や異変が、がんの兆候であるケースは、決して珍しくありません」
たしかにがんは恐いが、一朝一夕で大きくなることはなく、すぐに死に至るわけではない。時間をかけて進行するからこそ、いかに初期に気がつき、“芽”を摘むかが重要なのだ。専門家の知識と経験をもとに、「がんのはじまり」を見つけにいこう。
◆【大腸がん】繰り返される便秘と下痢
大腸がんは、がんにおける女性の死因第1位。だが、決して治りにくい病気ではない。東京ミッドタウンクリニックの森山紀之医師が説明する。
「基本的に大腸がんの進行は遅く、ある程度大きくなってから見つかったとしても、治る可能性が高い。同じステージで3cmのがんだったとして、すい臓がんなら予後が難しいけれど、大腸がんは充分治療できます。死亡率が高いのは、検診を受けないばかりか、異変があっても気がつかず放置してしまい、進行した状態で見つかる人が多いからです。
気がつかない、いちばんの理由は痛みがないこと。大腸の粘膜は痛みを感じる神経がないため、初期の段階ではがんによる腹痛を感じることがないのです」
そんな大腸がんでわかりやすい兆候は、「便秘と下痢の繰り返し」。森山さんが続ける。
「大腸にがんができると、腫瘍が盛り上がって硬くなり、腸自体が細くなります。すると細くなった腸の上に便がたまり、通過しづらくなるため、便秘になる。
その状態がある程度続くと、今度はたまった便を排出するために腸が水分を取り込んで便を溶かし、下痢になる。
便秘と下痢のサイクルは3日に1回、1週間に1回など個人差があるが、繰り返されるようならば、大腸がんを疑った方がいいでしょう」
もっと早期の段階では、腹痛を覚えることもあるという。