人生で最も大きなストレスは何だろうか。アメリカの精神科医、トーマス・ホームズらの研究によれば、ライフイベント(人生の出来事)のうち最も心に大きな負担のかかる出来事は「配偶者の死」だという。
たとえば、ホームズらが作成したライフイベント・ストレス表では、高い点数の出来事(遭遇すると心にかかる負担の程度が大きいもの)として、次のようなものが挙げられている(参考:小杉正太郎編著『ストレス心理学』)。
「配偶者の死 100」
「拘留 63」
「個人のけがや病気 53」
「解雇・失業 47」
「1万ドル以上の抵当(借金) 31」
この数字について、ストレス・マネジメント研究者で、『「首尾一貫感覚」で心を強くする』著者の舟木彩乃氏はこう解説する。
「ホームズらの研究は今から半世紀以上も前のもので、ストレスを受ける度合いは生活環境や個人差も大きいので、この数字自体は絶対的なものではありません。それでも、けがや病気、失業や借金といった心理的負担の大きい出来事と比較しても、配偶者を失うことのダメージがいかに大きいかを示している一例だと言えるでしょう」
配偶者は、最も身近にいる理解者であり、さまざまな課題やトラブルを解決する際の支えになってくれる存在でもある。そんな配偶者の死は、日々の不安やストレスに立ち向かう際の“よりどころ”が失われることを意味する。そのため、他のライフイベント以上に大きな喪失感につながるのかもしれない。
◆「なんとかなる」という安心感
最近も、妻を失った俳優やタレントが葬儀で悲しみに満ちた心情を吐露したり、夫を失った妻が沈痛な想いを綴った手記が話題になったりしている。
その中でもとくに印象深いのは、プロ野球の野村克也元監督が、「サッチー」の愛称で親しまれた妻の沙知代さんを亡くした際に見せた意気消沈ぶりだろう。
二人は、球界きってのおしどり夫婦として知られ、現役時代、「野球をとるか女をとるか」と迫られた野村元監督が次のように答えたエピソードは有名だ。
「仕事は世の中にいくらでもある。でも、沙知代は世界に一人しかいない」