テレビをつけても、ネットを見ても、はたまた電車の中やお店でも…何だか窮屈に感じたり、「そこまで必要!?」と思うような過剰サービスに遭遇したりすることが最近多いのではないだろうか。“和を以って貴しとなす”がわが国の美徳だったのに、見回せば不寛容や過干渉、過剰反応ばかり──。このイヤ〜な雰囲気、どう思いますか?
漫画家でコラムニストの辛酸なめ子さんは、かねてから炎上大国・日本の現状を憂いてきたSNSウオッチャーの1人だ。
「最近は、女性芸能人のSNSが、取るに足らないことで炎上します。例えば“いちご狩りでコンデンスミルクをつけて食べたらたたかれた”“手作りの恵方巻が大きすぎて炎上した”など、些細なことを目の敵にしてたたくのは、芸能人の幸せぶりに格差を感じ、対する自分は幸せではないと嫉妬が増幅されて、彼女らを引きずり下ろしてやれと思う人が増えたため。
TwitterやYouTubeでは、不用意な投稿が多いのに対し、FacebookやInstagramはキラキラしたリア充を見せつけられるので、より悶々とする人が多いのでは」(辛酸さん・以下同)
最も攻撃的なのは書き込む人だが、周囲も黙ってそれを見ていてウサを晴らしており、ネットニュースのユーザー投稿欄にも、厳しい批判や正義感を振りかざした意見が並ぶようになったことに恐怖を感じるという。
「実は先日、そんな日本と正反対のインドを旅してきました。インフラもルールもまったく整っていないインドの田舎は、土の道はデコボコ、トイレもすごく汚なくて、1000年前から変わらないような暮らしをしています。でも、不思議とすれ違う人々はピュアな笑顔ときれいな目をしていて、貧しくとも幸せそうでした。クラクションの音さえプワ〜と間の抜けた感じで、高速道路を車が逆走しても怒る人はいない。
それに比べて日本はすべてがきっちり整いすぎていて、少しの遅れやミスも許せない。つまり、何を当たり前と思うかで人の幸福度は変わり、寛容度も違ってきます」
匿名性の高いSNSはイライラ・カリカリのはけ口になりがちなので、気をつけて発信しているそうだ。
「私が書く時は、『元・海の王子のKKさんはマグロ漁船に乗ったり、皇居に住みついたたぬきに懐かれたりしたら信頼度がアップするのに…』などとできるだけお笑いやボケ、脱力の方向を心がけ、炎上エネルギーを鎮魂したいと思っています」
※女性セブン2019年3月7日号