猫の死因で、がんと並んで多いのが“腎臓病”。急性と慢性があり、症状や原因は異なるが、いずれも早期発見&早期治療により生存期間を延ばせるという。病気のサインから症状、治療方法などを紹介する。
腎臓は腰のあたりにあるソラマメ形をした臓器で、左右に1つずつある。おしっこを作る役割があるほか、血圧の調整や赤血球を作るためのホルモンの分泌、カルシウムの吸収を助けるビタミンDの活性化など、さまざまな働きがある。
そんな大事な腎臓の機能が低下する「腎臓病」には、急激に症状が進む“急性腎臓病”と、長期にわたりゆっくり進行する“慢性腎臓病”があり、慢性腎臓病は高齢の猫に多いと白金高輪動物病院・中央アニマルクリニック顧問の獣医師・佐藤貴紀さんは言う。
「急性と慢性では、症状にも違いがあります。慢性の場合、はじめは飲水量とおしっこの量が増えますが、その後は反対に、おしっこの量が減るなど尿量の変化が起こります。
一方、急性の場合は1週間以内に症状が進行するため、多尿期がなく、突然、乏尿・無尿になります。さらに食欲不振、嘔吐、下痢などの症状も現れます」(佐藤さん・以下同)
元気がなくなって、体形が変わるほど体重が減少したら要注意だ。
◆食事療法で生存期間が約3倍に
高齢の猫に慢性腎臓病が多いのは、加齢により腎機能が低下するためだという。一方、急性腎臓病の原因は大きく次の3つに分類できる。
【1】心臓など、腎臓より前の臓器に問題が発生し、腎臓への血流量が低下して起こる
【2】腎臓そのものが障害を受けて起こる
【3】排泄器官など、腎臓より後ろにある臓器に問題が発生し、その影響で起こる
「【1】は、主に脱水や心不全などにより腎臓に送り込まれる血液量の減少などで引き起こされます。【2】の原因は、水分不足。猫は祖先が砂漠で生活していた経緯もあり、日頃から水分をあまり摂りません。猫の腎臓は貴重な水分を体に残そうと、老廃物から水分を再吸収することに重点をおくため、腎臓の働きが弱くなり、血流が悪くなって体調を悪化させるのです」
さらに、ぶどうやユリ科の植物を食べて中毒になるケースや、ウイルスによる感染症なども【2】に当てはまる。
【3】は、尿路結石など排泄のトラブルが引き金となる。
長期的に腎臓が障害を受けると、重度の貧血により、最悪は死に至る。
「腎臓病が発症する原因はさまざまで、複合的な要因が関係しています。急性から慢性に移行するケースもあります。慢性化すると元には戻らないので、早期発見・早期治療が大事となります」
いつもは水を飲みたがらないのに急に飲む量が増えた、おしっこの量が増えたなどといった場合はすぐに病院へ。
「治療として最も効果が期待できるのが、食事療法です。腎臓病食を与えた猫は、与えなかった腎臓病の猫よりも約3倍も生存期間が長かったとの報告もあります」
完治は難しくても、病気の進行は遅らせられる。日頃から、愛猫の体重の減少や尿の量・頻度には気を配りたい。
※女性セブン2019年3月7日号