昨年ブレイクしたドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)。これまでBLに注目してこなかった層も、その魅力の虜になった。
BLの源流は1960年代末から1970年代にかけての少女漫画にあるとされる。マンガ研究者のヤマダトモコさんはこう言う。
「当時、1949(昭和24)年前後に生まれて『24年組』と呼ばれる萩尾望都さん(『トーマの心臓』、『ポーの一族』)、竹宮惠子さん(『風と木の詩』)、木原敏江さん(『摩利と新吾』)など、少年同士の恋愛を描いた漫画が一般の少女漫画誌に掲載されていました」
作家や編集者が男性ばかりだったこの時代、男性作家よりもかなり原稿料が安かったという「24年組」の活躍が、のちのBLのベースとなった。1978年には、男性の同性愛を扱う専門誌『COMIC JUN』(のちに『JUNE』と改称)が創刊された。
「この時期、男性同士の恋愛を描いた同人誌をコミックマーケットで手売りする女性が多数現れました。1980年代に入ると、『キャプテン翼』など、既存の漫画を同性愛風にアレンジする作品がブームに。この時は、描き手も読み手も女性が中心ですが、同好の士以外には内緒にする人がほとんどでした」(ヤマダさん)
1990年代には、BLという言葉が生まれ、BL専門の商業誌が増え、そこで描く作家の多くは同人誌出身だった。
「2000年以降は、BL出身の作家が他ジャンルでも大ヒットしました。おそらく少女時代にBLを愛読した人がテレビなどの制作サイドに入るようになったのではないでしょうか。裾野が広がった印象があります」(ヤマダさん)
そして現在。作家、編集者ともほぼ女性ばかりで、女性の手が男色の世界を織り成していく。数多の作品のなか、今回取材した多くの人が勧めるのは、『どうしても触れたくない』(ヨネダコウ著・大洋図書)。それぞれにトラウマを抱える会社員と上司の無器用な恋物語を描き、読者の心をわしづかみにした作品だ。
『BL進化論 ボーイズラブが社会を動かす』(太田出版)の著者で、BL研究家の溝口彰子さんはこう言う。
「嫌な上司と思っていた人と部下が恋愛関係になる話ですが、展開の巧みさに胸がキュンとして切なくなります」
同じく職場の人間関係を描いて人気なのが、『東京心中』(トウテムポール著・茜心社)。テレビ制作会社を舞台に、新米ADと先輩ディレクターがまさかの恋に落ちる。