「母の口臭が、急にキツくなったんです。ふと不安になり、病院に連れて行ったら、胃がんが見つかりました」。これは、医療ジャーナリスト・村上和巳さんのケースだ。
がんは早期発見、早期治療が大原則。日常の“ささいな異変”に気づくかどうか、それが生死の分かれ目になる。
大腸がんに続き、女性のがん死亡率2位である肺がん。たばこの影響が大きいといわれるが、受動喫煙でもリスクは高まるゆえ、非喫煙者でも油断はできない。
「肺がんはステージIならば、3年生存率は約88%。充分助かる可能性があります。しかし、早期は自覚症状があまりなく、発見しづらいのが難点です。だからこそ、小さなサインを見逃してはなりません」(村上さん)
ポイントは「咳」だ。
「自身に喫煙歴があったり、家族が喫煙者で受動喫煙していたりする場合は、特に“止まらない咳”に注意した方がいいです」(村上さん)
池袋大谷クリニック院長で呼吸器内科専門の大谷義夫医師は、「咳が続いたら病院に行ってほしい」と話す。
「風邪が原因の咳ならば、長くても10日ほどで治ります。2週間以上続いたら、がんに限らず何らかの病気を疑った方がいい。咳ぜんそくや結核、肺炎ということもありえます。長引く咳が、風邪によるものなのか、がんによるものなのか、検査をしなければ私たち医師にも判断がつきません」
肺がんである場合、咳や痰に血が混じることもある。東京ミッドタウンクリニックの森山紀之医師はこう言う。
「肺がんの場合は動脈から出血するので、長引く咳に加え、痰にピンク色に近い鮮血が混じる。肺がんは早期では症状が出にくいものの、気管支のあたりに腫瘍ができた場合、気管支炎や肺炎の症状が出て病院にかかったところ、早期の肺がんが見つかったというケースもあります。咳が出てから病院に来ても充分に助かるからこそ、異変に気がついたらすぐに対処することが重要です」
自ら異変に気がついて検査を受けても、画像診断で見落とされてしまえば元も子もない。大谷さんは「咳が長引く際には呼吸器学会専門医の受診をおすすめします」と話す。
「肺がんは早期発見で根治の可能性が高まるため、検診を受けることが重要です。2人以上の医師が読影をする人間ドックや病院が理想です。また、検査の種類は胸部X線検査よりもCT検診の方が肺がんを見つけやすいとされ、アメリカでは年齢と喫煙歴に応じてCT検診が推奨されています。ただしCTには胸部X線より被ばく量が多いという欠点がある。検診施設に相談し、必要に応じた検査を受けるといいでしょう」(大谷さん)
※女性セブン2019年3月7日号