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「BLは卒業するものではない」と昨今の作家は考える

BLが注目されるようになった理由とは?

 刺激的なキャッチコピーで世に衝撃を与えたのは、昨年放送されたドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)。これまでBLに触れてこなかった人々も、注目するようになった。

『おっさんずラブ』に続き、料理上手の弁護士を西島秀俊(47才)、その同居人の美容師を内野聖陽(50才)が演じるドラマ『きのう何食べた?』(テレビ東京系、よしながふみ著・講談社)が4月にスタート予定。

 関ジャニ∞の大倉忠義(33才)と成田凌(25才)が初共演する映画『窮鼠はチーズの夢を見る』(水城せとな著・小学館)は2020年に公開予定だ。

 なぜ、これほどBLが注目されるようになったのか。 まず指摘できるのが、優れた作家や作品が増えたことだ。 現在は同人誌やBL出身の作家が、意欲的に他ジャンルに進出する。

『BL進化論 ボーイズラブが社会を動かす』(太田出版)の著者で、BL研究家の溝口彰子さんはこう語る。

「なかでもBL誌でデビューして、『大奥』や『きのう何食べた?』などのヒット作を生み出した、よしながふみさんは先駆者です。昔は一般誌で連載をもったら、『もうBLは描かない』という人が多かったのですが、今は『BLは卒業するものではない』という意識の作家が増えています。たとえば、雲田はるこさんの『昭和元禄落語心中』の漫画やドラマに接した人たちが、男性同士の関係性の艶っぽさに興味を持ち、雲田さんのBL作品を読み進めるという流れも少なくありません」

◆子供と一緒にBLを楽しむ女性も

 認知度が上がり、「BL好き」を公言しやすくなったこともある。 福岡県在住の57才主婦が苦笑しながら語る。

「子供の頃から萩尾望都さんの『トーマの心臓』や『ポーの一族』を読み漁り、大学生の時は『JUNE』(男性の同性愛を扱う専門誌)の表紙にカバーをつけて本棚の奥に隠していました。結婚して子供を産んでからもBL専門誌を毎号購入し、主人にバレないようにこっそり読んだものですが、最近はBLが“市民権”を得たことですっかりオープンに。今では23才の娘を巻き込んで一緒に『昭和元禄落語心中』や『おっさんずラブ』を楽しんでいます」

 この主婦のように、かつての愛読者が母親となり、子供と一緒にBLを楽しむケースも少なくない。

『恋と軍艦』(講談社)で同性愛を描いた漫画家の西炯子さんは、BL、つまり「ボーイズラブ」という名称も影響していると指摘する。

「何十年も前から男性同士の関係は女性が愛でるものでしたが、それを『ボーイズラブ』と名づけたことで、女性の持っていた後ろめたさが一気に薄まりました。深い水底にあったものが、水面から見える位置まで浮いてきて、手に取りやすくなったイメージです」

 現実が漫画を追い越した面もある。 現在は、セクシャルマイノリティーの可視化が進み、東京都の渋谷区や世田谷区など各自治体で、同性のカップルを「結婚と異ならない程度の実質を備える」関係として証明したり、区長に対して「宣誓」できる「パートナーシップ制度」の導入が進む。

「LGBTやセクシャルマイノリティーについて、後ろ暗い性的な話だけでなく、人権問題として堂々と語られるようになりました。世間一般が同性愛に持っていた偏見が薄れて、テレビドラマや映画では、名のある俳優が堂々と同性愛の役を演じるようになった。こうしたこともBL人気が拡大した要因かもしれません」(溝口さん)

※女性セブン2019年3月7日号

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