「英才特別枠」採用でプロになった9歳の仲邑菫さん(写真/時事通信フォト)

「確かに、かつて教育雑誌で紹介されたのを機に、急に生徒が増えた印象はあります。囲碁といえば昔は年配の男性がやるイメージでしたが、現在は知育に役立つことが広く定着し、子どもに習わせる親御さんが増えましたね」

 新宿こども囲碁教室では、現在、中学生までの200人が囲碁を習いに来ている。そのうち未就学児が70~80人もいるというから驚きだ。プロを目指す子どもは1割ほどだというが、「首都圏では子どもの囲碁人口は多く、私が教室を始めた頃から比べて10倍にはなっています」と藤沢八段。

 このたび小学6年でプロ入りを決めた上野梨紗さんも、4歳でこの新宿こども囲碁教室に入っている。梨紗さんのお姉さん(上野愛咲美女流棋聖)が6歳でこの教室に通い始め、梨紗さんも続いたという経緯だ。4歳というスタートの早さは、小学生プロが生まれる大きなひとつの要因だ。

 そしてもうひとつ。エポックメイキングな出来事が2012年3月にあった。未就学児対象の「渡辺和代キッズカップ囲碁大会」が誕生したのだ。

 当初、「19路盤で打てる幼稚園児なんているのか?」「大会が成り立つのか?」などと言われ、開催は無理だと日本棋院が判断していたという。しかし主催した渡辺和代さんが「囲碁は子どもの教養にとてもいいことだから囲碁普及のためにもやるべき」と、涙を流して頼むほど、強い意志を持って開催にこぎ着けた。

 フタをあけてみれば100人を超えるちびっ子たちが全国から集まり、真剣勝負を繰り広げた。対局マナーもよく、しっかり19路盤で碁が打てる未就学児がこれほどいたとは、囲碁関係者にとっては予想外の出来事だったのだ。その中に、4歳になったばかりの仲邑菫さんと6歳の上野梨紗さんがいた。

 年少さんだった仲邑さんは当時18級くらいの棋力だった。大阪から出てきたときには、ベスト16に入る意気込みだったが、負けてしまった。帰りの新幹線で仲邑さんは泣いて悔しがり、「来年は1回も負けたくない」という。それにはどうしたらいいかと母親と話し合い、毎日碁の勉強をしようと決め、それからまさに欠かさず碁に向かう日々が始まったのだ。

 キッズカップの実行委員で日本棋院常務理事の原幸子四段は、こう話す。

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