認知症は今や多くの人の関心事だが、一方で曖昧で偏ったイメージや漠然とした不安を抱く人も多い。
一般的によく知られるアルツハイマー型認知症以外にも、レビー小体型、血管性、前頭側頭葉変性症ほか多くの種類があり、それぞれ特徴がある。きちんと知っておかないと受診のタイミングを見逃し、症状に翻弄されることにもなる。
認知症は早期診断、早期治療が大事と語るシニアメンタルクリニック日本橋人形町院長の井関栄三さんに聞いた。
【アルツハイマー型認知症】
■記憶障害
同じことを何度も聞く、物を置き忘れる、約束を忘れるなど。ヒントがあれば思い出せる老化によるもの忘れとは違い、出来事そのものを忘れる。
■意欲・関心の低下
今までやっていた家事や好きだった趣味などを億劫がる。
■時間の見当識障害
年月日、季節が曖昧になる。場所がわからなくなり迷子になったりするのは少し進行してから。
※もの盗られ妄想などのBPSD(周辺症状)も出現。
【レビー小体型認知症】
■幻視
現実ではない人物や小動物、生物以外のものが見える。周囲がゆがんで見えたり(変形視)、見間違い(錯視)なども起こりやすい。
■レム睡眠行動障害
就寝中の悪夢に伴う寝言や体動。本人は自覚がないことも多い。
■認知機能の変動
ぼんやりした状態と意識がハッキリした状態が1日、1週間、1か月間隔などで変動する。
※初期の記憶障害は目立ちにくい。進行しても比較的認知機能が保たれるため、病気に対する不安や悲観が大きく、うつになりやすい。進行すると、歩行が遅い、転びやすいなどのパーキンソン症状も。
【血管性認知症】
■夜間せん妄
夜中に起きて大声を上げたり暴れたりする。
■感情失禁
感情の起伏が激しく、泣いたり怒ったりする。
※アルツハイマー型、レビー小体型に血管障害が伴うケースも多く症状は多様。脳卒中などがきっかけで前ぶれなく発症することも。
【前頭側頭葉変性症】
■人格変化
抑制が効かなくなり、社会ルールが守れない、理由もなく激昂するなど、元の性格とは違った人格になる。
■常同行動
同じ時間に同じ行動を行う。同じルートを徘徊して戻ってくるケースも多い。同じものを食べ続けるなどの食行動異常も。
■言葉が理解できなくなる(意味性認知症)
相手の言葉の意味が理解できず、話せるが、会話は困難になる。
※家族や周囲の見守りが必須の認知症。初期に記憶障害などが目立たないため、認知症と気づきにくい。