ライフ

涙の物語、子づくり諦めた夫が数千万円ローン組み買ったもの

子無し夫婦 車と病気が愛を深めるきっかけに(イラスト/ico)

 涙を流すことは時に、人の心を楽にする。心洗う、泣ける話。57才・主婦が実体験を語ってくれた。

 * * *
 結婚して8年、不妊治療を続けたものの子供を授からなかった私たち夫婦が、ようやく「あきらめようか」と、心を決めたのはお互いが35才の時のこと。突然夫から呼び出され、“あの子”を紹介されたんです。

「この子が今日からおれたちの息子です」

 そう言って、夫が私に見せたのは、真っ赤なスポーツカーでした。あの時ほど呆れ、怒り、何も言えなくなったことはありません。なんせ数千万円ものローンを勝手に組まれたわけですから…。今後相談なく大きなことを決めたら、離婚すると宣言したくらいです。

 それから夫は、箱根、湯河原、伊東と、毎週のようにドライブに連れて行ってくれました。車に乗っている時は、お互いをパパ、ママと呼び合い、夫婦げんかをしても、ドライブをすれば、いつの間にか仲直りしている。子供がいない私たちにとって、車が子供であり、まさに“かすがい”になっていったんです。

 それから22年経った昨年春、私は原因不明の高熱を発症。診察を受けると、政府指定の難病だとわかりました。医師から説明を受けている間、夫は真っ青な顔をしてふるえていました。私は自分のことより、夫の生活や私の治療費、会社を辞めなければならないため収入が半減することの方が心配でした。

 ところが、入院生活が始まると夫は打って変わって明るくなり、「ご飯はどうしているの?」「治療費は足りている?」と、聞いても笑顔で「大丈夫」としか言わなくなったんです。

 2か月の入院が終わり家に帰ると、愛車がありません。売って治療費に充てたというのです。絶句する私に夫は、

「おれはママがいないとダメだから、ママに生きていてもらうよう、息子には自立してもらったんだ。相談しないで悪いと思ってる。離婚は勘弁してくれ」

 と、ポツリ。離婚どころか感謝しかありませんでした。ここまで夫婦の愛を深められたのは、車と病気のおかげです。これからも“大きな息子”である夫と一日一日を大切に歩んでいこうと思います。

※女性セブン2019年3月7日号

関連記事

トピックス

天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン