東京・墨田区の『すみだ水族館』では、現在58羽のマゼランペンギンが暮らしている。そのうち、確認されているカップル数は19組。なんと約半数ものペンギンが愛を育み合っているわけだが、その一方で、自由な恋愛を謳歌させるといった面もあるんだそうで…。人間以上に劇的なペンギンのラブストーリーを紹介する。
◆パイン♂&イチゴ♀の場合
【パイン】すみだのだめんずという異名を持つ。わが子(卵)をサッカーボールの如く蹴飛ばした過去アリ。
【イチゴ】母性本能をくすぐるタイプに弱めなちょっぴり不思議ちゃん。無我の境地で行う半身浴好き。
交際歴約2年。順調に育んだふたりの間に愛の結晶でもあるわが子(卵)が生まれた時。普段から落ち着きのないパインが父親の自覚に欠けるこんな行動に…。
「なんと、パインは愛するイチゴの卵を温めるどころか、サッカーボールのように蹴飛ばしちゃったんです」(飼育スタッフの福谷彩香さん・以下同)
卵は産まれた時に擬卵に替えており、有精卵ではなかったため、この一件は不幸中の幸いとなったのだが…。
「パインはイチゴの産卵直後も、イチゴを置き去りにしたまま帰ってこなくて。あまりのだめんずぶりに、イチゴもきっとすぐ愛想を尽かすだろうと思いきや、むしろそんなダメな男に代わって“私がなんとかしなきゃ!”と力を奮い立たせてしまい、ずーっとひとりで卵(擬卵)を温めていました」
男をダメにする典型的なパターン。だが、だめんずパインも、かつては盲目的な愛を貫く献身的な男子だったという。
「イチゴはプールの浅瀬で体の半分を水につけたまんま、ぼーっとするなんて、ほかのペンギンではしないようなことをする不思議ちゃん。パインは、そんなイチゴの気を引こうと同じ姿勢をとったりしていました」
ペンギンは年に1度の換羽の時期、イライラ、ピリピリとデリケートになりがち。なかには性格がすっかり変わってしまうものもいるほど。もしかすると、そんなこともパインの問題行動に関係しているのかも!?
しかし、辛抱強く健気に夫の帰りを待ちわびるイチゴにだってがまんの限界というものがある。それにまだまだお年頃。
そんな折、突如、現れたのが年下のはなび(♂)。“すみだのビッグダディー&ビッグマミー”と呼ばれる大家族夫婦の長男だ。愛情あふれる大家族の元ですくすくと育ったはなびは、しっかり者だけど甘えん坊。
「母性本能が強いイチゴはすっかりはなびに心奪われてしまい、ついにパインの元を去って行ったのです」
冷たくすれども恋女房。パインが負った心の痛手はさぞかし大きいのでは…。
「そう思っていたんですが、意気消沈する暇もなく、次なるだめんず好きなたいこ(♀)がパインにラブモーションを仕掛けてきたんですよ。今ではふたり揃って仲よく泳いでみたり。時には飼育スタッフと無邪気に遊んでいるたいこの初々しい姿を、近くの岩場からじ~っと愛でるパインの姿も見られるようになりました」
なんとも微笑ましい年の差愛。だがしかし、たいこははなびの実の妹という複雑な関係。人間であれば、ぞ~っとするような地獄絵図を思い浮かべてしまいそうだが、ペンギンたちは特に家庭内で大きなトラブルを巻き起こすわけでもなく、それぞれ順調にお互いの新たな恋を楽しんでいるという。
※女性セブン2019年3月14日号