東京・墨田区の『すみだ水族館』では、現在58羽のマゼランペンギンが暮らしている。そのうち、確認されているカップル数は19組。なんと約半数ものペンギンが愛を育み合っているわけだが、その一方で、自由な恋愛を謳歌させるといった面もあるんだそうで…。人間以上に劇的なペンギンのラブストーリーを紹介する。
◆マロン♂&バナナ♀の場合
【マロン】のんきでおっとり屋。バナナと交際してから男らしくなったと巷で評判。
【バナナ】小顔なわりにふくよかなナイスバディーの持ち主。気立てのよさでも人気者。
異性からも同性からも好かれるモテ男なのがマロン。
「以前はライム(♂)とぴったりと寄り添い合って、まるで恋人同士のように羽づくろいをしていたので、男の子同士のカップルと呼ばれていました」(飼育スタッフの福谷彩香さん・以下同)
のんびり屋で自由奔放。そんなマロンに熱烈アタックをしたのがキュートな外見で女子力高めのバナナだった。
「バナナは毎日、ちょっとずつマロンとの距離を縮めていって、ここぞというチャンスをうかがっていました」
ちなみに、ペンギンが意中の相手に向けて優しく翼をパタパタとさせるのは愛情表現の証。なかには人間(飼育スタッフ)にこの求愛行動をするペンギンの姿も見かけられる。
「最初のうちはライムの手前もあってか、素っ気ない態度を装っていたマロンも、次第にバナナの一途な気持ちを受け止めるようになって、鳴き交わしなどをするようになったんです」
見事、バナナの略奪愛は成就。ところが、恋が実った後もマロンの気ままな性格は変わるよしもなく…。
「バナナが待ちわびているのもお構いなしで、マロンはひとり水中遊泳を満喫。喜んでいるのはバナナばかりで、マロンはつれない態度をとることが多かったんです」
そんなマロンの周りを体をくねらせてくるくると歩いていたりもしたバナナ。
「何度もかまってアピールをしてみたものの、徐々にマイペースすぎるマロンの性格に嫌気がさしてきたのでしょう。気がついた時には向かいの岩にいるバジル(♂)へと女心が傾き始めていました」
こうして、白昼、マロンがいない合間を縫っての逢瀬が始まった。マロンが出かけたのを見計らって、バナナはいそいそとバジルの元へ…。
「バナナにしてみれば、完全に割り切った関係の恋みたいな感じでした」
ところが、遊びを知りつくした男は勘が鋭い。一見、のんびり屋な“体(てい)”でいるわりには女の上をゆく束縛心の強さも持ち合わせている。
マロンがバナナの変化を見逃すことはなかった。
「バナナの様子が怪しいとうすうす感じ始めたマロンは、大好きな水中遊泳もピタリとやめて、バナナの居場所を捜すようになったんです」
耳をすませば、向かいの岩場で彼女の鳴き声が聞こえてくるではないか。
メラメラと嫉妬に燃えるとともに、行きすぎた自分の行動を、やや反省した様子にも見えるマロン。それからというもの、バナナのそばにいる時間も増え、昼間の遊びも少し控えめになったんだとか。
※女性セブン2019年3月14日号