いじめが激減、校内暴力も消え、有名校進学数も平均学力も区のトップレベル。私立中進学率の高い世田谷で「越境してでも行きたい」と人気の公立中学校がある。それは、東京都世田谷区の区立桜丘中学校だ。
桜丘中学校は、チャイムも鳴らなければ、服装も自由。校則をやめたことで知られている。 授業の中でも、英語で巻き寿司の作り方を教わったり、理科の実験では3Dプリンターで心臓を作ったりとユニークだ。
桜丘中では、生徒会で決まったことは必ず実現できるよう教員が全力でサポートすることになっている。
先日の生徒総会では、定期テストの廃止、自動販売機の設置、校庭の人工芝化、体育館の冷房化が決まった。同校の西郷孝彦校長(64才)はこう語る。
「重要なのは、まず自分の意見をみんなの前でもきちんと言えること。定期テストを廃止してほしいと思う生徒の意見に対して、テストが得意な生徒はテストの結果で自分を評価してもらいたいと考えるかもしれません。定期テストの廃止に反対するなら、その時、勇気をもって声をあげないとダメだったということにも、気づいてほしいのです」
政治や社会の出来事に無関心で他人事のように考えている大人が多い中で、しっかりと自分の意見を表明できる大人に育ってほしいと西郷校長は言う。
「校則がないから、先生が生徒を指導する際は『〇〇という理由でこうしなさい』と説明するしかなく、それを聞いた生徒は、その理由が正しいのかどうかを考える必要があります。時には先生によって見解が異なるでしょうが、その場合も、生徒はどちらが正しいのか自分の頭で判断して行動します。難しいようですが、社会に出たら自分で判断するのは当たり前のことですよね」(西郷校長、「」内以下同)
また、校則がない分、社会の決まりはしっかり遵守させる。
「普通の学校なら器物を壊した時、故意でなければ許される場合が、ここでは原則すべて弁償です。極端な話、生徒同士がけんかして相手にけがをさせてしまったら傷害事件、勝手に人のモノを取ると窃盗罪になる可能性もあります。先日、ある生徒の鍵がなくなった時は、警察に連絡を取りました。“学校の中だから許される”なんてことは、この社会にはあり得ないのです」
「わが校で警察沙汰などにしたくない」と考えるのが、ほとんどの大人の思考だろう。だが、大人だからこそ、社会のルールがなんたるかを教える責任があるのだ。
※女性セブン2019年3月14日号より一部抜粋