中国マフィアは残虐なイメージで知られるが、最近はもっぱら「闇金」をメシの種としているようだ。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
* * *
日本では、スルガ銀行事件を通じて投資の危うさが浮き彫りにされた。いわゆるアパート・マンション投資で若者が騙されるケースが続出している。若者たちがアパート・マンション投資に走ったのは、少しでも不安定な将来を心配してのことだ。
自分たちがリタイアするころの年金があてにできないのだから、「欲をかいた結果」ではなく「涙ぐましい」努力──もちろん全部が全部ではないが、「将来やばいよ」と言われれば心が動く環境は現実にある──と言わざるを得ない。
一方、中国に目を向けてみると、こちらもやっぱり知識や警戒心の薄い若者が“カモ”にされる犯罪が大きな社会問題となっているようだ。2月26日、北京において公安部が記者会見を開いた。
報告を行った刑偵局の曾海燕政治委員は、公安部が「掃黒除悪闘争」の名のもと力を注いできた「新型暴力団」の関わる犯罪への対策で、全国が連携して1664の犯罪グループを取り締まりメンバー1万6349人を逮捕したと発表した。
彼らは中国各地で詐欺など2万1624件の犯罪にかかわり、押収された資金は35億3000万元(約589億5100万円)に上ったという。
この会見を受けて全国のメディアが一斉に「新型暴力団」の存在と、それにかかわる犯罪を報じたのだったが、その見出しはどれも衝撃的なもばかりだった。
犯罪グループの手口は、「套路貸」と呼ばれるある種の高利貸しである。どれも、ちょっとした短期的な借り入れへの迅速な対応から美味い儲け話など、入り口を低くして待ち受けるという手口だ。
CCTV(中国中央電視台)は、「被害者のほとんどが学生で、なかにはうつ病になり自殺したものも少なくなかった」と報じ、河南省では、129人の犯罪グループが1万8000人を騙し、浙江省では「套路貸」犯罪グループによる被害額が4億元(約66億8000万円)に上ったと報じた。
公安部によれば、被害者は年利24%で契約していたものの、暴力的な行為が始まり、最終的には2000%の利率になっていたというから恐ろしい。
套路貸の問題は、新しい犯罪として認識されているが、被害はもう何年も前から始まっていた。昨年5月の新華社(南京発)の記事では、3万元(約50万1000円)を借りた女性の借金が一年後に800万元(約1億3360万円)になっていたという事件を扱っている。直後には、中国銀行保険監督管理委員会など四つの機関が連名で「民間借貸」の管理強化を呼び掛けていた。