安価で機能的なキッチン家電を手がけるシロカから、わずか1分でトーストを焼き上げるオーブントースターが誕生した。“サクもち”の絶妙な食感が楽しめるトースターはどのように生まれたのか? 寒い冬に活躍する“あるもの”がヒントとなっていた。
今年1月に発売されたシロカの『すばやき』は、その名の通りすばやくおいしいトーストが焼けるオーブントースターだ。シロカは2016年、4枚のトーストを約2分で焼き上げる『ハイブリッドオーブントースター』を商品化した。
庫内を瞬時に高温にする「グラファイトヒーター」と、庫内に熱風の対流を生み出す「コンベクション機能」を組み合わせ、高い火力と熱風により、外はサクッ、中はもちもちのトーストが出来上がる。
そんな『ハイブリッドオーブントースター』は当時、究極のトースト性能といわれていた。これをさらに上回る商品を作ろうと、開発が始まった。
トーストをもっとおいしく焼くにはどうしたらよいか──? 従来モデルから監修を担当していたトースト研究の第一人者である工学院大学の食品化学工学研究室教授・山田昌治さんに再び協力を依頼した。
山田教授のパン焼き理論は、“速さがうまさ”。高温ですばやく焼くことで、パンの水分が中心に集まり、絶妙な食感が生まれるという。そのためには庫内温度を上げなければならない。まず、庫内のヒーターを見直した。
従来モデルで使われていたグラファイトヒーターは一気に発熱できるが、熱を出す方向性が強く、トーストを均一に高温で焼くことが難しい。一般的なトースターに使われている「石英管ヒーター」や「ハロゲンヒーター」といったさまざまなヒーターを試したが、なかなかうまくいかなかった。
そこで目を付けたのが、“電気ストーブ”だ。電気ストーブで使われている「カーボンヒーター」を庫内上下に搭載し、トーストに最適な熱温度にするため、熱の量や巻き線の数を何度も調節した。しかし、それだけではすばやく焼き上げることができない。
そこで、トーストにしっかり熱を与えるため、ヒーターの周囲に「反射板(反射板は2枚焼きモデルにのみ搭載)」を施した。反射板の大きさや角度を調節し、トーストに熱を集中させることで一気に焼き上げることができた。
また、従来モデルは熱が庫外に漏れてしまい、扉が熱くなる傾向があった。なるべく熱を閉じ込めるよう、扉の厚さや色の濃さなど検討を重ね、「低放射ガラス」を採用。これにより、熱の放射を防ぎ、庫内の熱を保つことができる。
外のサクサク感や、中のもちもち感、パンの耳までやわらかいといった食感を実現するために1000枚以上のトーストを焼き、改良を重ねていった。こうして、約1年半の歳月を経て従来モデルを超えるトースターが完成した。
短時間で絶品のトーストが焼ける『すばやき』があれば、幸せな気分で一日がスタートできそうだ。
※女性セブン2019年3月14日号