政府が法制化する働き方改革のひとつとして、正社員と非正規社員の待遇格差をなくす「同一労働同一賃金」が2020年から導入されるが、そもそも短時間勤務ほか雇用形態が多様化する中で、本当に正社員と非正規社員の格差を是正することなどできるのか──。働く主婦の調査機関「しゅふJOB総合研究所」所長兼「ヒトラボ」編集長の川上敬太郎氏がレポートする。
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以前、安倍首相は「この国から非正規という言葉を一掃する」と決意を語った。しかし、労働力調査によると非正規の職員・従業員の比率は2018年平均で37.9%。数にして2120万人にも及ぶ。
これらおよそ4割の非正規労働者がいなくなるという状況は現実的に起こりうるのだろうか?
就業形態が非正規でなくなるとしたら、パターンは2つしか考えられない。一つは、非正規労働者がすべて、俗に正社員と呼ばれる正規労働者になること。もう一つは、非正規労働者の一部が正規労働者になり、なれなかった者は無職になるパターンだ。
しかしながら、後者が望ましくないことは明らかである。となると、想定すべきは非正規労働者がすべて正社員になるパターンということになる。
ここで一点注意しなければならないのは、非正規労働者の定義だ。一般的には、非正規労働という言葉は知っていても、その内訳までは把握されていない。
先に触れた労働力調査によると、非正規の職員・従業員のうち、約7割を占めるのはパート・アルバイトである。よく非正規労働=派遣社員のような印象を受ける指摘を目にするが、あれはミスリードである。派遣社員は非正規の職員・従業員のうちの6.4%でしかない。他は契約社員が13.9%、嘱託が5.7%などだ。
非正規労働の大半はパート・アルバイトであるが、中でもパートは非正規の職員・従業員のうち48.8%と半数近くを占める。その比率の高さから、パートこそ非正規労働者の代表格と言える。