「在位30年記念式典」で、国民に語りかけた天皇陛下の姿は、いよいよ平成という時代の終わりが迫ってきたことを実感させた。天皇陛下は国民へ何を伝えようとしているのか。皇太子時代からの数々の発言をまとめた単行本『天皇メッセージ』から、そこに込められた思いを著者・矢部宏治氏と一緒に考えたい。
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最近、韓国の文喜相国会議長が米メディアに対し「慰安婦問題の解決には天皇の謝罪が必要」と発言したことで、日本国内では大きな反発が起きました。しかし実際は明仁天皇は、非常に明確な形で植民地統治の時代に日本が韓国に与えた苦難について、謝罪しているのです。
「このような両国の永く密接な交流のあいだには、我が国が朝鮮半島の人々に多大の苦難を与えた一時期がありました。私は先年、このことにつき私の深い悲しみの気持ちを表明いたしましたが、今も変わらぬ気持ちを抱いております」(1994年3月24日、韓国の金泳三大統領を招いた宮中晩餐で)
この内容が翌1995年の村山談話に受け継がれ、2005年の小泉談話でもくり返し、同じ謝罪が行なわれました。韓国でも両国の関係をきちんとフォローしている人は、みな知っている事実です。
中国に対しても同じです。1992年10月に初めて中国を訪問した際、楊尚昆国家主席主催の晩餐会で、明仁天皇はこう述べられています。
「この両国の関係の永きにわたる歴史において、我が国が中国国民に対し多大の苦難を与えた不幸な一時期がありました。これは私の深く悲しみとするところであります」