芸能

女優・渡辺美佐子 網タイツと、ポニーテールの女忍者

名女優がデビュー時代を振り返る

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、俳優座養成所を卒業して劇団新人会に入団した渡辺美佐子が、時代の鏡として現在に生まれた作品に魅力を感じたこと、『真田風雲録』で女忍者となった思い出について語った言葉をお届けする。

 * * *
 渡辺美佐子は俳優座養成所卒業後の一九五四年に劇団新人会に入団すると、ブレヒトの『家庭教師』ですぐに主役を演じた。

「俳優座には素敵な女優さんが大勢いらっしゃいましたが、新人会は一年上の小沢昭一さんたちが作ったばかりの劇団ですから、俳優があまりいないんですよね。それが私には凄くラッキーでした。俳優座に入っていたら、しばらくは通行人とかからだったと思いますが、最初から主役でしたので。ですから、女優としてやっていこうとか考える暇もない感じで、次から次へといい仕事をもらえたんです」

 六二年、千田是也・演出、福田善之・作の舞台『真田風雲録』では、真田十勇士の一人、霧隠才蔵を演じている。

「当時は六〇年安保闘争というのがあり、稽古が終わったらみんな当たり前のように代々木公園に集まってデモに参加していました。それでも安保は通ってしまった。その挫折感が覆っていた時代で、無念の想いを福田さんは作品にぶつけていました。

 私は初舞台からブレヒトとかボルヒェルトとか、千田先生のドイツ系の硬い翻訳劇をやっていたのですが、あまり楽しいとは思えませんでした。といいますのも、舞台も映画も『時代の鏡』ですので、過去の名作ではなく、その時代の『今、現在』に生まれた作品に魅力を感じるんです。その楽しさを教えてくれたのが福田さんの作品でした。

 ですから、最初はブレヒトをやりましたが、その後はその時代に新しく作られた創作劇ばかりに出ています。創作劇って、演じる身にとっては凄い賭けなんですよ。『こういう話を書きますよ』と言われてはいますが、どんな作品が来るかは分からないわけですから。

 でも、やらなきゃよかったと思ったことは一度もありません。そういう時代の息吹を伝えられてよかったと思っています」

『真田風雲録』の才蔵は、「戦う女忍者」像が初めて可視化されたキャラクターでもある。

関連キーワード

関連記事

トピックス

初めて沖縄を訪問される愛子さま(2025年3月、神奈川・横浜市。撮影/JMPA)
【愛子さま、6月に初めての沖縄訪問】両陛下と宿泊を伴う公務での地方訪問は初 上皇ご夫妻が大事にされた“沖縄へ寄り添う姿勢”を令和に継承 
女性セブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
ピーター・ナバロ大統領上級顧問の動向にも注目が集まる(Getty Images)
トランプ関税の理論的支柱・ナバロ上級顧問 「中国は不公正な貿易で世界の製造業を支配、その背後にはウォール街」という“シンプルな陰謀論”で支持を集める
週刊ポスト
“極度の肥満”であるマイケル・タンジ死刑囚のが執行された(米フロリダ州矯正局HPより)
《肥満を理由に死刑執行停止を要求》「骨付き豚肉、ベーコン、アイス…」ついに執行されたマイケル・タンジ死刑囚の“最期の晩餐”と“今際のことば”【米国で進む執行】
NEWSポストセブン
石川県の被災地で「沈金」をご体験された佳子さま(2025年4月、石川県・輪島市。撮影/JMPA)
《インナーの胸元にはフリルで”甘さ”も》佳子さま、色味を抑えたシックなパンツスーツで石川県の被災地で「沈金」をご体験 
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン