《すべての女性が輝く社会》キャッチフレーズは踊るが、現実はついていかない。安倍政権は2020年に女性管理職の比率を30%に高める目標を掲げているが、第4次安倍改造内閣の女性閣僚は、片山さつき内閣府特命担当大臣(59才)のひとりだけ。2012年に第2次安倍政権が発足して以来、女性閣僚の数は最も少ない。
財界も同様だ。日本の上場企業3655社のうち、女性が社長を務める会社は39社。割合はわずか1%だ。だが少しずつではあるが、その「岩盤」は崩れてきている。
「女性が事業を興すなんてありえない」──そんな時代に起業した、実在のとある女性社長をモデルにしたコミック『ハイパーミディ中島ハルコ』(集英社)が注目を集めている。
原作は作家・林真理子さんの『最高のオバハン 中島ハルコの恋愛相談室』(文春文庫)で、美容関連のIT企業社長である中島ハルコ(52才・バツ2)が毎回、「あなたみたいな中途半端な女には男は寄ってこないわよ」「愛人なら愛人らしくもっと謙虚になりなさいよ!!」と舌鋒鋭く、世の悩める男女を批評する。
口調こそ厳しいが、妙に説得力のあるハルコの金言がたまらない作品だ。
「アラフォー女性を中心に、幅広い世代に読まれています。パワフルでチャーミングなハルコさんが人気で、『読んでスッキリする』『元気が出る』との感想が届きます。ちなみにタイトルの『ハイパーミディ』は、原作の『最高のオバハン』を英語風にした東村アキコさん考案の造語です」(集英社・コミックス担当編集者)
中島ハルコが社長になったと推測される20~30年前、日本の女性社長はきわめて珍しかった。
『女性社長.net』の運営者で、女性経営者をサポートする株式会社コラボラボの横田響子さんが指摘する。
「当時、女性が社長になることは超レアケースでした。女性が起業しようとしても家族やパートナーが積極的に賛成せず、せっかく社長になってもさまざまな偏見に苛まれて、男社会の価値観に同調する『男性化』が求められました。当時の女性社長は、今とは比べものにならないほどたくましかったといえます」
帝国データバンクの調査では、2018年4月末時点の日本企業における女性社長の比率は7.8%。30年前の4.2%以降、ゆるやかに上昇してはいる。女性社長は男性と比べて「同族継承」(50.4%)の割合が高いが、「内部昇格」(8.3%)や「出向」(0.4%)の割合が低い。これは、配偶者や親から経営を継承する女性が増えたが、「実力本位」で社長となる女性がまだ少ないことを意味する。
一方で、起業による社長就任の割合は35.6%だ。