距離を見直すというのは、単にその距離が苦手だからということではない。違う距離を走らせることでペースの違いなどを感じ取らせ、がまんすることを覚えさせるということだ。『週刊ポスト』での角居勝彦調教師による連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」より、お届けする。
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引き続き、距離を見直す「立て直し」についてです。1800mで芳しくなかった馬を1400mで走らせる。その目的は勝利ではない。頑張ることを覚えさせるための立て直しだと前回の当連載に書きました。
では仮にテコ入れをしなかった場合、どうなるのでしょう。
1800mでは、初めはラクについて行き、そのうちどんどん抜かされて、多くの馬の尻尾を見ながらゴール板を過ぎる凡走になってしまう。そういうレースが続くと、馬の気持ちが折れていく。鞍上との折り合いもつかず、「競馬って、そういうもんなんだ」と、早くから諦めることを覚えてしまうのです。
そこで、1400mに距離を縮めると、どこかで頑張れる。ジョッキーの指示は、「折り合いは気にせず、かかってもいいから、とにかく行ってみなさい」という感じです。「最後だけは頑張らせるぞ」と。そうすることで馬の気持ちは折れず、次の調教に気持ちがつながるわけです。立て直しとは、馬の気持ちの立て直しなのですね。競走馬は、諦めずに追いかけることで集中力を高めて成長します。諦めないというメンタルこそが大事です。