3月11日、東日本大震災発生直後から本誌・週刊ポストカメラマンは被災地の風景を撮り続け、この日9年目を迎えた。
店舗、住居が建ち、復興への歩みは着実に前進しているように見えるが、岩手・陸前高田の嵩上げされた無機質な更地が広がる光景からは、先行きを見通すことのできない不透明な現実だけが浮かび上がる。
栃ケ沢地区で暮らす村上美江子さん(88)は、流された家屋や嵩上げされた台地を見守り続けてきた。その後ろ姿は陸前高田復興の象徴だったが、8年余の年月の中で病を患い、外出もままならなくなった。
「昔は賑やかで栄えた町が、人影も少なく寂しくなってしまいました」