シーズンが到来すると安定して“需要”が高まることもあり、新薬の開発が活発に行なわれる花粉症治療薬。
ドラッグストアで買えるOTC薬(オーバー・ザ・カウンター=カウンター越しの略。ドラッグストアなどで購入できる「一般用医薬品」のこと)も多く、選択肢が増えているだけに患者の判断は難しい。耳鼻咽喉科いのうえクリニック院長の井上泰宏医師はこう話す。
「医療機関で『注射1本で花粉症が治りますよ』という話が出てきたら、他の治療法がないか、よく聞いたほうがいい。
花粉症の症状の緩和を目的としてケナコルトAというステロイド注射を行なうところがありますが、私自身は受けたくない。副作用が出た場合、2~3週間にわたって苦しめられるからです」
ケナコルトAは有効成分が体内で分解されにくいため、長期間にわたって花粉症の症状を抑えられる。ただしその半面、副作用も長時間に及んでしまうことがあるのだ。
「顔がむくんで『ムーンフェイス』という状態になったり、自覚していなかった高血圧や胃潰瘍が悪化するといった副作用が出るリスクがあります。治療ガイドライン上でも推奨されていません。
軽度な花粉症ならどの市販薬でも問題ないと考えます。私が重度の花粉症を患ったとしたら、経口ステロイド剤を飲むと思います。ケナコルトAと同様の効果がある薬です。内服薬なので効果の持続時間が短いですが、副作用が出た場合にすぐ服用を中止できるからです」
※週刊ポスト2019年3月22日号