缶やペットボトルなどで売られている清涼飲料で「お茶」といえば、緑茶や麦茶、ウーロン茶などが圧倒的シェアを握るが、ここにきてにわかに「紅茶」飲料の新商品が相次いで投入される見込みだ。各社が紅茶飲料に注力する理由は何か──。経済ジャーナリストの河野圭祐氏がレポートする。
* * *
国内の清涼飲料マーケットにおいて、紅茶が占める割合は5%しかないという。その中でもガリバー的な存在なのが、キリンビバレッジの「午後の紅茶」だ。飲料総研の宮下和浩氏が紅茶市場全体の動向を解説する。
「現在の紅茶飲料の市場は年間販売で9800万ケース(2018年実績/1ケースは500ml×24本)。昨年は若干上向きましたが、2017年まではずっと減り続けてきたジャンルです。
2018年の内訳は、『午後の紅茶』が5090万ケースで独り勝ち。2位は森永乳業の『リプトンチルド』(紙パック)で1650万ケース、3位は日本コカ・コーラの『紅茶花伝』で1310万ケースという順でした。その他、サントリー食品インターナショナル(以下SBF)が手がける、リプトンのペットボトルは700万ケースでした。
実際、店頭をのぞいても、昨年は『紅茶花伝』がオレンジティーを出したり、『リプトン』ブランドが多く並んでいたりと、市場環境が徐々に上向いてきた感じがうかがえました」
そして、今年は紅茶市場への新商品投入が相次ぐ。まず、コーヒーの「CRAFT BOSS」を大ヒットさせたSBFが3月19日、「CRAFT BOSS TEA」の商品名で無糖紅茶を出す。
同社の常務執行役員ジャパン事業本部ブランド開発事業部長の柳井慎一郎氏はこう語る。
「昨年、『CRAFT BOSS』は2700万ケースを販売し、相当な成長をさせていただきました。ちょっと急進し過ぎるくらいです。今後は、このボリュームをなるべくキープしながら、新しい提案でどれだけオンさせていくかがキーになると思います」
要は、SBFの想定を超える勢いで「CRAFT BOSS」が売れてきたため、減り続けている缶コーヒー、業界ではショート缶と呼んでいる商品の減少を補ったうえで、もう一段の販売積み増しを実現していくには、“変化球”も必要ということなのだろう。そこで無糖紅茶というわけだ。