日本は「世界一の透析大国」といわれる。全国で約32.5万人が透析を受け、医療費は年間1兆5500億円にのぼる。高額療養費の特例で患者の自己負担が月1万円で済むという手厚いセーフティネットがあることが大きい。そんな中、患者への透析を中止し死亡させた病院と医師の行為が議論を巻き起こしている。同病院では5人が透析治療の中止を選び、4人が亡くなった。問われるべきは「医師の倫理」なのか。かつてタブーとされた方法による腎移植で多くの患者を救い、患者からは「赤ひげ先生」、一方では医学界から「悪魔の医師」と呼ばれた万波誠・医師の見解を聞いた。
腎臓病患者の44歳女性が人工透析中止を選択して死亡した問題で担当の外科医への批判が強まっている。
〈東京・公立福生病院 医師、「死」の選択肢提示 透析中止、患者死亡〉
〈透析中止、死の直前、生きる意欲、夫へメール「たすけて」?〉
毎日新聞にそんなセンセーショナルな見出しが躍ったことがきっかけだった。「透析中止」は腎臓病患者にとって死につながる選択だ。
この女性患者は外科医から、透析を続けるか中止するかの選択肢を示され、「透析中止」を選択。意思確認書にも署名していた。夫も同意していたと報じられている。
病院側は院長名で「家族を含めた話し合いが行なわれ、その記録も残されている」「悪意や手抜きや医療過誤があった事実もない」と説明したが、それが火に油を注ぐ結果になった。患者団体「東京腎臓病協議会」の事務局長が語る。