多くの薬をのみ過ぎた結果、害が生まれてしまう「多剤併用」が問題になっている。厚生労働省の調査によると、1か月に1つの薬局から受け取る薬剤の数が5種類以上にのぼる人の割合は、40~64才で5人に1人、65~74才で4人に1人、74才以上になると半数近くが該当する。さらに4人に1人が7種類以上の薬を受け取っているのだという。
厚労省は多剤併用を問題視し、「高齢者の医薬品適正使用の指針」というガイドラインを2018年5月に作成。国をあげて不要な薬を減らす取り組みを推し進めている。
多剤併用は処方薬に限った話ではない。いつでも簡単に手に入る市販薬も、併用することでリスクが高まるケースはある。薬剤師の堀美智子さんはこう話す。
「例えば、糖尿病の治療薬であるスルホニル尿素系製剤とアスピリンが配合された市販の鎮痛剤を一緒にのむと、低血糖が起きる可能性がある。アスピリンはどこでも手に入るが、併用が難しい。高血圧の治療に使われる抗凝固薬と併用すると、血が固まりにくくなる作用が重なって、血が止まらなくなるなどの副作用が出るリスクがあります」
誰でも自由に購入できる市販薬同士であっても油断は禁物。併用に注意したい代表的な薬は、かぜの総合感冒薬だ。堀さんが続ける。
「さまざまな成分が配合されている総合感冒薬は、特にほかの薬との併用が難しい。今の時期、花粉の症状を抑えるために鼻炎薬をのみながらかぜで総合感冒薬をのむ人もいるかもしれませんが、どちらにも『抗ヒスタミン薬』が含まれるので過剰摂取となり、眠気に襲われたりのどが異常に乾燥したりする可能性があります」
かぜで熱が出たときにやってしまいがちだが、総合感冒薬と解熱鎮痛剤の組み合わせも避けた方がいい。
「どちらにも『アセトアミノフェン』や『イブプロフェン』と呼ばれる解熱鎮痛成分が入っています。とりすぎると、子供や高齢者だと体温が下がりすぎて低体温ショックを起こす危険がある。成人でも胃腸障害、肝機能障害、腎機能障害になる可能性があります」(堀さん)
※女性セブン2019年3月28日・4月4日号