シェアハウス「かぼちゃの馬車」を巡るスルガ銀行の不正融資や、レオパレスの施工不良アパート問題など、昨年から相次いで投資用不動産業界を揺るがす不正が明るみになったことで、すでに物件オーナーになっている多くの個人投資家が危機的状況に陥っている。だが、「“一部の人たち”には千載一遇のチャンスが巡ってきた」と話すのは、不動産ジャーナリストの榊淳司氏だ。
* * *
2018年にはかぼちゃの馬車&スルガ銀行の事件、そして2019年に入って、レオパレスの問題がかまびすしい。このどちらもが個人レベルの不動産投資にまつわる問題である。
実のところ、2017年頃から金融庁が銀行に対して「個人の不動産投資に対する融資は、しっかりと審査しろ」というプレッシャーをかけていた。つまりは「デタラメに貸すな」ということである。
日本は有史以来の低金利状態が続いており、本来は利ザヤで稼ぐはずの銀行は経営が苦しい。2015年から2016年頃は、個人の不動産投資に対して目に余るような緩い基準で融資が下りていた。その最たるものがスルガ銀行のかぼちゃの馬車オーナーへの融資だった。預金残高を改ざんしたり、売買金額を取引額よりも高く書きこんだ契約書を作成したりするなど、不動産業界の一部では日常風景であったことが俄かにクローズアップされてしまった。
その結果どうなったのか? 個人の不動産投資に対する銀行融資は極端に審査が厳しくなり、メガバンクからはほぼ融資を引き出せない状態になっている。スルガ銀行にならって積極的に不動産担保融資を行っていた一部の地方銀行や信用金庫も、警戒色を露わにするようになっている。つまり、金融庁などの監督官庁に突っ込まれても、きちんと説明できる融資しか行わなくなっているのだ。
この「金融引き締め」効果は、2018年の後半から市場に及んできた。簡単に言うと、個人の不動産投資の対象となる「利回りもの」と呼ばれる一棟マンションやアパート、小規模ビルなどの価格が下がり始めたのだ。
個人で不動産投資を行っている人々は、価格が下落した(利回りが上昇した)そういう物件を買いたいのだが、融資が下りないので買えない状況に追い込まれている。逆に、手持ち物件を売却しようとしても売れなくなっているのだ。
こういった個人投資家向けの物件情報が、全国紙の広告で目立つようになってきた。普段は不動産投資を考えない人々から買い手を募ろうという動きである。東京や大阪の都心エリアなら、郵便ポストにそういった投資向け物件の広告チラシが盛んに投函されるようになっている。