詐欺が社会問題となっているのは日本だけではないらしい。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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老後が心配──。日本と同じく、高齢化が進む中国に暮らす人々にとって、深刻な悩みだ。なかでも年金である。中国では「養老金」という。
官僚や国有企業、大企業の従業員であれば、概ね養老金は支払われる。もともと、生涯給与として支払われていたものを転化したもので、十分な額か否かということを問わなければ、最低限のものは保障されている。
あとは物価上昇との戦いだ。だが、商店やレストラン、中小零細企業の従業員は、養老金をほとんどあてにはできない。制度的には存在していても、実際には体力がなく掛け金が欠けられていないといったケースが多いからだ。
そういう人々が頼りにしているのが民間の保険会社の用意する養老金である。そしていま、この養老金保険で問題化しているのが、リタイア間近の人々を狙った詐欺である。
3月16日、『経済観察報』が報じた事件は、リバースモーゲージを利用した詐欺だった。リバースモーゲージとは、自宅を担保に老後の資金を手当てし、自らが死亡したときに不動産で精算する仕組みで、中国のケースもほとんど同じだ。
だが、このケースは「房本」(権利書)を持ち出し、それを担保に借り入れをさせ、借り入れた資金を投資に振り向けさせて、高い利回りを毎月の給与のように振り込み続ける…という仕組みだった。いかにも詐欺といった話だ。
『経済観察報』が報じたケースでは、被害者が契約して間もなく、相手企業が北京市工商行政管理局朝陽分局から「経営不正常企業」としてリスティングさせたことを知るという幕切れだった。将来を心配する老人と若者が、それぞれが抱える不安心理に巧みに付け込まれる詐欺がいまの中国では増えている。