吉原遊郭をはじめ江戸時代の性生活の実状を伝える「春画」も、女性から支持されている。女性向け春画朗読イベント『艶声春画』への登壇や、国内外に向けた春画の情報発信などを行なう20代の美歴女「春画ール」氏にその魅力を訊いた。
「いまから10年ほど前、女子高生の時に見た葛飾北斎の春画『蛸と海女』に衝撃を受けたのが、春画に興味を持ったきっかけでした。海女さんが2匹の蛸に捉えられて性的快感を覚える様子を描いた有名な春画ですが、“当時からこんな描写があったのか”と衝撃を受けたことを覚えています。性的な要素だけでなく、ストーリー性や笑い、絵画としての芸術性、美しさを兼ね備えているところが春画の魅力です」
彼女が名乗る「春画ール」とは、文字通り「春画+女子(ガール)」を組み合わせたペンネームだ。彼女は、365日春画を眺め、SNSを通じて情報を発信している。
「北斎が描いた『陰陽淫蕩の巻』を紹介した時は、女性からの共感の声が多かったですね。春画に女性たちが興味を持つのは、“女性は男性の3歩後ろにいるのがいい”という価値観ではなく、女性から男性を誘導して気持ち良くさせていく、という前向きな姿勢が描かれているからだと思います」
春画を見ながら大っぴらに会話することに抵抗感を覚える人もいるかもしれない。しかし、春画ール氏は「本来、春画はタブー視されるものではない」と語る。
「当時、春画は貸本屋が訪問販売の形で各家庭に届けていました。女性たちは、春画を借りることにハードルを感じなかった。むしろ“おめでたいもの”として祝い事の際に配ることもあった。当時のように抵抗感なく春画を共有できるよう活動を続けていきたい」
※週刊ポスト2019年3月29日号