過当競争による歯科医院の倒産が増える一方、増収増益で潤っている医院も多くある。歯科業界の“二極化”を読み解くカギが「自費診療」だ。治療費の金額を歯科医が自由に設定できる自費診療の“儲けのカラクリ”とは──。
歯科医に経営を指南するコンサルタントたちの動きを見ていて、最近目立つのが、「インプラント」から、「予防歯科」「セラミック」へのシフトである。
◆セラミック 仕入原価は患者の支払額の10分の1
自然の歯と同じように見える自費診療の「セラミック」は特に女性に人気だ。患者の支払額は都内の相場だと、「12万円前後」だが、この数年、価格破壊が進んでいる。広域医療法人グループなどが、「5万円台」の格安セラミックを仕掛けているのだ。
この価格を実現するため、中国などの海外にセラミックの技工(製造)を委託する。ある業者のセラミックは、基本価格1万2000円。ここから値引き交渉があって、発注数によって約6000円前後まで落とすという。大手医療法人なら一括で交渉するので、“格安”を謳いながら、患者からもらう費用(5万円台)の10分の1程度で仕入れていると考えられる。
もう一つの方法は、CAD/CAMシステムの利用だ。AIによって機械が自動で削り出すので効率性が高い。セラミックだと1万2000~1万5000円で仕入れられることが多いようだ。こうして仕入原価の数倍から約10倍の費用を患者に請求して利益を確保していた。
一方、強度などで課題があるが、外見はほとんどセラミックと見分けがつかない保険の「CAD/CAM冠」は1万5300円(小臼歯)。3割負担なら患者の支払額は5000円弱だ。