本誌・女性セブンでは読者とテレビ評論家の計1200人を対象に、「最も好きな朝ドラヒロイン」についてアンケートを実施した。あなたの好きな朝ドラヒロインは、何位にランクインしただろうか。
1位は2015年『あさが来た』のあさ役を演じた波留。2位は2013年『あまちゃん』のアキ役だった能年玲奈(現在・のん)。3位は1983年『おしん』のしん役を演じた小林綾子。4位は2017年『ひよっこ』のみね子を演じた有村架純。そして、5位は『半分、青い』の鈴愛を演じた永野芽郁となった。
初期作品ながらも上位・6位に食い込んだ1966年の『おはなはん』。この作品はスタートから波乱含みだった。
当初、主演・はな役に決まっていた森光子さんがクランクインの直前に乳腺炎を発症し、降板。急きょ白羽の矢が立ったのが樫山文枝だった。
同作が放送されると主婦がテレビの前でくぎづけとなり、東京都の水道局員がNHKに「朝ドラが始まった途端に水量メーターが急に下がり、水の出がよくなります」と伝えてきたという逸話が残っているほど人気を誇った。
樫山が演じた主人公のはなは、軍人である夫を病で失い、子供を女手一つで育てながら、次々と襲いかかる苦難を乗り越え、人として大きく成長を遂げていく。それまでの朝ドラは、家族を中心とした物語が中心だったが、『おはなはん』から女性の一代記の様相を呈してくる。明るく歌詞のない挿入歌も、記憶に刻まれている。
樫山は当時の状況をこう振り返る。
「明治から昭和の激動の時代、はなはどんなことがあっても『人間世界の出来事じゃ。なんとかなろうわい』と、くじけず生き抜きます。楽天家で、南国の太陽のように明るい女性。 常に前向きで、周囲を励ますキャラクターに、私も当時演じながら元気をもらっていたんです。
撮影中はとにかく楽しくて無我夢中でした。視聴者の皆さんが、自分の生活と一緒に一喜一憂してくださるのが、ひしひしと伝わってきました。おはなはんが夫を亡くしたときは、ファンから弔電をいただき驚いた記憶があります。
最も印象に残っているのは、出征する夫・速水中尉に対し、はなが『速水中尉は決して死ぬべからず!』と敬礼する場面。夫役の高橋幸治さんが復唱するのですが、その姿がとても印象的でした。
この素晴らしい作品で私は、女優としてのパスポートをもらった気がします。撮影していた1年間の重みは、今でも自分の中に大切な思い出としてしまってあります」
※女性セブン2019年3月28日・4月4日号