高校野球、春の選抜大会の第1回大会を制した古豪が香川の高松商業だ。監督就任6年目の長尾健司も、同校のユニフォームに憧れたひとり。だが、自身は県下の丸亀高校出身。ライバル校の視点から眺めた伝統のユニフォームと、ストッキングに描かれた“横線”は脅威だった。
「この横線は日本一の回数を示しています。私も選手もストッキングに新たな線を加えることが目標です」
選抜優勝を表わす白の2本線と、夏の全国制覇を意味する赤の2本線、そして国体優勝を記念した黄色の線に加え、2015年の神宮大会初優勝によって水色の線が加わった。色は当時の選手の投票によって決められたという。
広島商業や松山商業といった伝統校が軒並み甲子園から遠ざかり、全国的に公立の商業高校の苦戦が続く。高松商業も長尾就任後の2016年選抜まで20年間聖地に届かなかった。主将の外野手・飛倉爽汰は大会を前にこう話した。
「ストッキングにもう1本線を加えたいですし、新元号での初代王者になりたいという気持ちもあります」
四国のライバル・松山商業は全国で唯一、大正、昭和、平成のすべてで優勝を経験。高松商業はその偉業に並び、そして超えるべく、まずは平成最後の甲子園に挑んだ。
(文中敬称略)
取材・文■柳川悠二(ノンフィクションライター) 撮影■藤岡雅樹
※週刊ポスト2019年4月5日号