「もしもっと早く気がついていれば…」。大きな病気を経験した人はそう口を揃える。そして、このように続ける。「今思えば、ちょっとおかしかったんですよね」と。その「ちょっとおかしい」に気がつけるかどうかは、まず何が病気の兆候かを知ることから始まる。ちょっとした症状が、病気のサインとなっていることもあるのだ。
たとえば「肩こり」などは、あなどれないという。小倉記念病院循環器内科主任部長の安藤献児さんは、肩こりを訴える人が狭心症を発症していたケースがあると注意を促す。
「マッサージや整体に通っても改善されず、整形外科を受診しようと思っていた矢先に息苦しさに襲われ、搬送されてきた人がいました。狭心症の場合は、左肩のこりや痛みに加え、奥歯の痛みやのどの締め付けなど顎まわりの違和感を訴える人が多いのです」
普通の肩こりとの分かれ目は「痛みが引くかどうか」だという。
「普通の肩こりなら、肩を動かすと常に痛かったり、腕が上がらなかったりします。一方で狭心症は、急に左肩に痛みがきて、数分でスッと引くのが特徴です。階段を上るなど運動をした時に左肩がだるくなるが、安静にしていると治る場合は狭心症の疑いがあるので、循環器内科を受診してください」(安藤さん)
経済アナリストの森永卓郎さん(61才)は2009年12月、激しいふくらはぎのかゆみを覚え、かき続けていたらパンパンに腫れてしまったのだという。そして、検査を受けてみたところ、重度の糖尿病だったというのだ。そんなケースもあるように、「かゆみ」も重病と関係していることがある。医療ジャーナリストの市川純子さんはこう話す。
「糖尿病の他に、腎機能の低下なども考えられます」
長時間の立ち仕事やオフィスワークで、脚のむくみに悩む女性は少なくない。そもそもむくみとは、細胞と細胞との間にある体液が、何らかの理由で増えてしまった状態だ。島医科大学会津医療センターの総合診療医である山中克郎さんが解説する。
「全身がむくむのは、心不全、腎不全、肝硬変が原因であることが多い。心臓や腎臓の働きが弱くなり、体内に水がたまっていくためむくみます。徐々に進行するため、病状が悪化してから見つかることが多いのです」
脚が急にむくんだ時も、注意が必要だ。
「片側の脚の膝から上が急にむくんだ時は、脚の静脈に血栓ができる深部静脈血栓症の恐れがあります。放置すると、血栓が肺に飛んで肺塞栓を引き起こし、死に至ることもあります」(山中さん)
※女性セブン2019年4月11日号