警察の内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た警官の日常や刑事の捜査活動などにおける驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、特殊詐欺の最新事情についてレポート。
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「警察は、事件が発生してからでないと捜査しないからね。捕まえる前のことや、事件になる前のことは、よく知らないのが現状だ。当然、俺たちも捕まる前のことについて警察に情報を漏らしたりなんてしない。やり口なんていくらでもあるんだよ。振り込め詐欺にしてもな。オレオレで流行したような手口なんて古い、古い」
特殊詐欺の手法は次から次へと変化しており、警察の取り締まりとイタチごっこの様相を呈している。今の特殊詐欺について話を聞こうと、暴力団幹部を訪ねた。
取材場所として指定されたのは六本木のカフェ。大きな窓から柔らかい日差しが差し込み、とても心地よい。雰囲気はスタバやタリーズに似ていて今風のカフェだが、隣の席との距離は離れている。
「特殊詐欺なんていわれても、別に特殊なことをやっているわけじゃない。ちょっとした法の網目やシステムの穴を探して使ったり、人の心理を利用したりして手口を考えてるだけなんだけどね。やり口はそれぞれだ」
幹部が注文したのはアイスコーヒー。シロップとミルクはなし。
「オレオレのなりすましは劇場型の振り込め詐欺だろ。複数のやつが役割分担を決めて電話をかけて、驚かせてあせらせてね。電話をかけるのも、今の主流はフィリピンや韓国からだね。転送サービスを使えば、簡単に03や090発信にできるからさ。本局を向こうに持っていって、日本人がやっている。日本だと経費がかかるし、海外だから捕まらない」
「還付金詐欺はやっても微々たる金しか入ってこない。薄利多売だよ。詐欺としては息は長いけどね」
「保証金詐欺も一時期は多かった。ターゲットに『こちらは△△救済センターです』と電話する。“振り込め詐欺救済法”を利用した手口だ」
この法律は、振り込みを利用した詐欺被害に対して、回復分配金を受けとれるという救済だが、申請が必要で、犯人が預金口座からお金を引き出す前でなければ効力がない。
「ここがミソ。この救済法は詐欺の相手に振り込みしていることが条件だから、ターゲットとしては金を取りにきた相手に直接、現金を手渡したやつを狙う。条件から除外されているやつらさ。この手口は手がこんでいたが、電話が2台あればいいからね。やっていたのは日本人。今はもっと手口が巧妙だけどね」
苦笑いしながら、幹部がアイスコーヒーをすすった。
手口が巧妙とはどういうことか?
「最新のやり方は教えられんけどね。似たような話はいくらでもある」
後から足音が聞こえると、幹部は話すのを止めてグラスに手を伸ばした。席の横を人が通り過ぎるのを待つ。幹部が話し出したのは不動産投資についてだ。