漫画原作のドラマ化というと、ネットでの反応は否定一色になりがち。ところが4月にスタートする『きのう何食べた?』(原作・よしながふみ)については、SNSで「早く観たい」「神キャスティング」など好意的なコメントが多く見られる。今回に限らず、テレビ東京のドラマに対するネット好感度は高い。なぜ“テレ東のドラマ”は好感度が高いのか? テレビ東京ドラマ制作部チーフプロデューサー・阿部真士氏に話を聞いた。
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◆違うことをしていくしか
――テレビ東京のドラマに対して好意的な意見が多いが、どう受け止めているのか?
阿部:実際はもっと、批判があってもいいと思うんですよね。あまり好意的すぎるのも、ちょっと気持ち悪いじゃないですか。でも批判的なコメントはもちろんゼロではないので、それを見るとものすごい傷つくんですけど(笑)。ただ、それよりも多くの人たちが好意的な声を寄せてくださる。
なぜそうなのかはわかりませんが、企画としては全プロデューサーが「他局ではできないことをやろう」っていうのはかなり前、「ドラマ24」枠(※2005年から続く毎週金曜深夜の連続ドラマ)が立ち上げられた時から言っているので、それはずーっと根強くあると思います。プラス企画自体を“置きに行かない”というか、無難な形に置きに行っちゃうと埋もれてしまう…そうなると「うちでやる意味って、なくない?」って。
そもそも予算も少ないし、人手も少ない中、他局と同じようなことをすると、結果、クオリティは見栄えも含めて劣ってしまうので、だったらやっぱり「違うことをしていくしか、僕らの生きる道はない」という意識はすごいあるんですよね。
――視聴者の反響も好意的だが、人気俳優や監督が深夜枠にもかかわらず参加することも目立つ。
阿部:「おもしろいことをやらせてくれるから」じゃないですかね。もちろんテレビメディアで、マスに向けてやっているから、完全に手放しで好きにやっていいってわけにはいかないですが。例えば、『みんな!エスパーだよ!』(2013年4~7月)でも園(子温)監督に「ここまではOKですけど、ここからは難しいです」って戦い(笑)もありましたけど、そこはみんな大人なんで話せばわかってくれて…。
ある種プロデューサーと監督、主演だったり出演者だったりが共犯関係になって、誰も観たことのないものを「やっちゃおうぜ!」っていう、そこの“おもしろがり方”が原点になっているような気がしていますね。「テレ東だからさ、頭おかしいこと一緒にやろうよ!」って言ってくださる作り手の方がたくさんいて、そこを毎クール形にすることで、視聴者の方にも楽しんでいただけていると思います。
◆周りが見えなくなる
――原作の選び方や表現など、よく「テレ東は攻めてる」と言われるが、叱られることもあるのでは?
阿部:担当した作品の中では、いろんなところにお詫びに行ったり怒られたりしたのは『エスパー』(『みんな!エスパーだよ!』)が一番で…。「そもそもなんで『TENGA』とか出してるんだ!」ってすごい怒られて、内心「今!?」って(笑)。いろいろあって部分的には一生懸命消す、編集し直す…とかありましたねぇ。
会議なんかで「あれは大人のオモチャだろ!」って言われて、「あれは福祉用品です」ってひたすら言い張るっていう。福祉用品としての描写は一個もないですけどね、言い張りました(笑)。
――最近も『さすらい温泉 遠藤憲一』(2019年1月~、水曜深夜放送)で駅などに掲示する交通広告の審査に落ちて、作り直したという話が…。
阿部:そもそもメインビジュアルとして考えて、エンケン(遠藤憲一)さんも温泉の話だから「裸の人に囲まれてたい」といったアイデアもあって、入浴姿の女性たちがたくさんいるビジュアルが出発点だったんです。いずれにせよ深夜なので、中吊り広告とかそういうのは予算的にも「どうせできないだろうし」って、制約が必要になる部分は全く考えてなくて。
その後、「交通広告できそうです」って言われた時に、そういう前提だったことを忘れてそのまま「じゃあ、よろしくお願いします」と。あまりよく考えずに「テレビ東京だから、レギュレーションほかよりちょっとユルいのかなあ」とか、思っていました。普通に考えたらそんなことあるわけないのに(笑)。
基本、うちの人たちは僕を含めて、作品のことだけ考えると周りが見えなくなるんで。「え? 審査通らなかったのか」「あれ? ダメだったのか…」って、普通にみんな落ち込みました。そういうところが、みなさんに愛していただけるんですかねぇ(笑)。